あなたの弦音 (ページ5)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:14,499 hit

四話ページ5

｢待ってください。｣

と先程から何かを言いたげにしていた黒髪くんが少し声を張り上げて言った。

｢ん？｣

と黒髪くん以外の三人が疑問の声を上げ見ると

｢俺はどこの部にも入る予定はありません。｣

とキッパリと告げた。

｢およ？どうして？｣

トミー先生は黒髪くんの言葉に心底疑問に思ったような声で言った。
それに黒髪くんは少し言い淀んでから

｢うちは母が亡くなってから家事はほとんど俺がしてて。｣

と言うと

｢なんと……｣

｢え、おばさん亡くなったの？
何も知らなくてごめん！｣

とトミー先生は申し訳なさそうな声を出し、茶髪くんは顔を真っ青にして問いかけ両手を頭上であわせて謝った。

(この話私が聞いていても良かったのだろうか。)

｢いや、小六の夏だからもう全然。｣

と黒髪くんはなんでもないように言った。

｢そうじゃの。鳴宮くんのことは残念じゃが無理強いはいかん。三人はどうする？｣

トミー先生は黒髪くんのことは諦めて、私たちに問いかけた。
それにいち早く答えたのが茶髪くん。

｢俺はやるっす！湊がやらないのはすっげぇ悔しいけど、やりたいっす、弓道。｣

｢竹早くんはどうじゃ。｣

トミー先生は茶髪くんの言葉を聞いて、次は首席くんに聞いた。

｢ぜひ入部させてください。｣

｢君はどうするかね。｣

答えを聞いてトミー先生は次に私の方へ目を向ける。

(答えは決まっている。)

｢はい。ぜひお願いします。｣

そう返せばトミー先生はにっこりと目を細めて

｢それは嬉しいことじゃ。
鳴宮くんも気が変わったら見学だけでも来ておくれ。いつでも大歓迎じゃ。｣

そう言った。それに黒髪くんは

｢はい。｣

と言ってから少し頭を下げ踵を返して去った。

.