世を忍び_sgi ページ8
ナイスガイ職業詐欺。
***
黒を照明が照らす夜中、人々の熱は冷めることを知らず。
何重にもなった鮮やかな布が擦れ、高いヒールが高々と響き、三拍子に揃って組み合って柔らかに廻り。
貴族揃い踏みの舞踏会、そこに似合わぬ硬い紺制服が気を張りつめている。
「須貝巡査部長、各員配置完了しました」
「はいお疲れ様。それじゃあお前も警備に当たりな」
胸をしゃんと張って、堅苦しい敬語なんて使っちゃって。
職業柄しょうがないのだが、元がフランクな性格の自分にはどうも慣れないものだ。
綺麗な敬礼の後に、報告を終えた後輩巡査は自分の持ち場へと戻っていった。
須貝駿貴、もうすぐ三十路、仕事は警察官として町の治安を乱すことなく市民の安全を保守すること。
今回の舞踏会の警備におけるプチ司令塔的な立場でもある。
「皆様、遠いところからようこそ__」
主催者であろう、髭がなんとも立派なふくよかな体型の男性。
きらびやかな会場とは裏腹に、外やドア付近につく警察官の数は普通の警備の比ではない。
穏やかではない雰囲気の原因は、とある人物からの手紙にあった。
新月の今宵、舞踏会の終盤にて、
とある秘宝を頂きに参上する。
怪盗дама
дама……ダーマ、婦人の意を持つロシア語。
ここ数ヶ月前に姿を表した淑女怪盗を名乗るダーマは、愉快犯であると暫定的に位置付けられている。
ただの女一人に何をこんなに警備を固める必要があるのか……それは、彼女の怪盗としての実力が関係している。
「それでは、心行くまでお楽しみ下さい」
乾いた拍手、グラスをかち合わせる硬い音、入り交じる駄弁り声。
この一見穏和そうな会場をまるごと使って、奴は秘宝を盗みにくるだろう。
今までダーマが現れたのは四回、何れも一般人絡みの大混沌を招いた一連となった。
外の包囲網を掻い潜り、予言時刻通りにどこからともなく現場に現れる。
漆黒のマントを翻し、腰には同じく光沢の黒、二つの小型マシンガン。
覆面の下から聞き取れる笑い声はたしかに女性のものだという。
奴へと放たれた銃弾はまるで操られるかのように見事に脇をすり抜け、逆に催眠弾に返り討ちにあうのだ。
そして見失えば最後、誰も気づかぬ内に宝も奴も忽然と居なくなり、後日ふと気付けば宝は元の位置に戻っている……らしい。
あくまでもこれは噂、実際にダーマが来る現場に来たのはこれが初めて。
怖さ半分、興味半分。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます!許可とらなくても良いんですか...?やっちゃいますよ...?山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます!これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません! (2019年10月22日 10時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか?』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね? (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました!他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです!この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください! (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます! (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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