やーらしか_fkr ページ32
例えば、いつもは素っ気ない飼い猫が時々見せる甘ったれた顔のように。
例えば、強面な彼がとんでもなく甘いボイスの持ち主だった時の衝撃だったり。
例えば。
「勝岡さんっ」
「ひぇっ!?いきなりどがんしたんとっ!?」
黒淵眼鏡のいかにも控えめそうな彼女が放つ粋な佐賀弁での返事のように。
ギャップ萌えって存在するものなんだなと最近感じるようになった。
九州方面には縁の少ない僕には新鮮なイントネーション、法則に則ったり則らなかったりな文法に単語。
たまに顔を覗かせる須貝さんや川上のそれとはまた違った、許された者にしか見せることのない素顔のようで、優越感と特別感を僕に与えてくれる。
「可愛いなぁーホント。僕も佐賀に生まれてたらこうなってたのかな?」
「方言なんてあんまり良いものじゃないよ……からかわれるし」
「そう?寧ろ標準語の方が味気ないと思うけどなぁ」
「人って無い物ねだりばっかり」
「ははっ、そうだねぇー」
緩みまくりの自分の口元に手を当てて、少々ご立腹な勝岡さんをまじまじと観賞する。
腹をたてたその仕草も、地方や育った環境の違いかなんとなく見慣れないもので。
それでもわかりやすい表情の変化に僕は更ににやけ顔が止まらなくって、そんなやり場のない気持ちを一緒に笑い飛ばす。
この会話も聞きなれたルーティン、方言にコンプレックスを抱く彼女と方言を好く僕と。
見つめ続けていると、勝岡さんは参ったのか徐に立ち上がってキッチンへ。
「拳君ー、ココア飲む?」
気を逸らすためとはいえ、ココアを彼女入れてもらえるというのは嬉しいものだ。
「飲む」と答えれば出されたマグカップ。
柄の少ないシンプルな色違い、黒基調は僕、白基調は勝岡さん。
初めてデートした日に買った記念の品、三年ほど使っている陶器のそれには欠けたところなど一つも見られない。
まるで誠実な僕らそっくり、なんて言えばロマンチックかな。
「Aさん」
テーブルに二つが置かれたのを見計らって、下の名前で呼んでみる。
ビクッとわかりやすく肩が跳ねるのもいとおしい。
「いつもあいがとう。愛しとーばい」
まるでカーディガンのように彼女を背中から包み込んでやれば、茹で蛸みたいに真っ赤になった耳と小さな呻き声が。
予想以上の反応、勉強してよかった。
「……う、うちもがばい好きばい」
俯きながらこんな可愛いこと言っちゃってくれるAさん。
ホント、やーらしか。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます!許可とらなくても良いんですか...?やっちゃいますよ...?山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます!これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません! (2019年10月22日 10時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか?』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね? (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました!他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです!この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください! (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます! (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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