勝てなくて良いじゃない_kwkm *request* ページ24
鬣犬の続編。
***
フラれて、落ち込んで、別の恋をして付き合って……人生で一番のどんでん返しが起こったあの日から数週間。
「なぁA」
「何」
「アイス買ってきて」
「この猛暑日に?彼女をパシるの?」
「ダッツな」
「おいこら勝手に話を進めんなアホ」
主導権は彼方に握られっぱなし、カレカノらしいことなんて微塵もしていない。
これでは最早カップルとは言えないのでは?
好きだからこそ私はあの言葉にそういう意味で応えたつもりだし、私からはラブを伝えてはいるけれど。
私はそんなに魅力的に写らないのか、不安にもなってくる。
「えー、無理?」
「無理」
「Aも好きなん買ってきてええから」
「ダーメ」
所謂“人をダメにするクッション”に寝そべっては「えー」と文句を垂れる川上。
因みにここは私の家の中、彼から私への遠慮はほぼ皆無。
苛つく原因は彼方にあれど、私が弄られる原因は私自身にもあるのだ、突っぱねることも覚えなければ。
しかし流石は川上、ずる賢い人だ。
勿論わざとであろう甘い仕草で、的確に此方の良心と恋心とを揺さぶりにきている。
「お願い、ホンマに頼む」
「……財布貸して」
「流石A」
応酬を繰り返す内に折れたのは私の方。
呆れる気持ちがどこかありながらも、許してしまう自分がどれだけ甘いのか、と揶揄する気持ちもありつつ。
どこか上機嫌の彼に「勝ち誇った顔止めて」と溢してみせれば、「イケメンやろ」と更に煽ってくるもんだから。
怒ったところで得はないと私が諦めていることも川上は計算済みなのだろう。
そうなると今度は虚しくなってくるが、それが膨張しないうちにクロックスを履いて乱暴にドアを開ける。
「……これ下僕じゃね?」
日差しに焼かれながら歩道をあるけばイライラは増すばかり。
でも承諾して外に出た以上は買ってこなければ、と最寄りのコンビニでダッツを二つ購入。
右手に傘、左手にビニール袋、涼しい我が家を目指す。
そして帰れば。
「ただいま」
「お疲れさん」
労いの言葉はしてくれるのに、やっぱり欲しい言葉がこない。
部屋に入る気力すらない、ぼうっと立ったまま川上の背中を見つめる。
と、その背中が振り返り笑いかける。
「ありがとーな、好きやで、A」
……素直に喜べない自分は相当ひねくれてるらしい、し。
あの一言だけで全てどうでもよくなる自分は、少なくともダッツよりは甘いのだろう。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます!許可とらなくても良いんですか...?やっちゃいますよ...?山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます!これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません! (2019年10月22日 10時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか?』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね? (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました!他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです!この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください! (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます! (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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