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早くこの空間から解放されたい願望からか、残業は思っていたよりも早く終わった。
__本当は大部分が後輩のお手柄なのは内緒。
「いやぁ、ホントありがとうね福良君」
「いえ、僕は大したことは……」
「謙虚だなぁ。そんなにへりくだらなっても」
人通りはあれど、やはり夜道は暗がりに閉ざされていて不穏な空気が漂っている。
歩道を横並びで歩く私達、一見仲の良さそうに聞こえるこの会話はハリボテ。
「でもなんと言うか……傲慢な人は悪印象を持たれると言いますし」
「でも疲れない?一介の先輩に気をつかうの」
「……それ、畑田さんが言います?」
鋭い閃光が、闇夜の中で私を見据える。
動転し視線を落とせば、広い肩幅に対して薄い胸板、ネクタイの辺りに浮かぶ対の皿が目に映る。
微量ながら右に傾いていた。
異常を悟ったのは本能、それに随い半歩後ろへ退き、鞄のポケットに収納しているスマホを手で探る。
浮かべた莞爾はそのままに、トーンは気持ち高めを意識して。
「ええ……私そんなに他人行儀かな?」
「どこまでしらを切るつもりなんですか、畑田さん?」
「しらを?何を言って__」
「気付いているんでしょう?僕が冷たい人間だってこと」
笑みの中の冷戦。
私の態度が偽物であることを見抜いたのだ、それなりの頭脳派だと思われる福良君を誑かすのは至難の技だろう。
とるべき行動がわからず、黙り込み思いあぐねる。
そんな私を呑んでかかるレンズの向こうの瞳、薄い嘲笑、だぶつく器。
「苦手だなぁ、福良君のこと」
「違いますよ多分。靡かない人が初めてなだけじゃないんですか?」
「じゃあ福良君はどうなのさ?そういう人に会ったことあるの?」
「別に好かれようとしてないんでどうでも良いです」
千両の笑みを見せながらそんなことを言ってのける福良君、恐るべし。
不可解な動きを見せぬ心は偽りがない証拠、他人から見れば歪んだ見栄なのだろうか。
「だから不思議なんですよね。なんで畑田さんは他人に尾を振るのか」
「人に好かれたいからじゃない?嫌われるより良いでしょ」
「……成る程。じゃあ僕これから先輩に尻尾振ります」
「それはわざとかな?」
「畑田さんのポリシーには則ってます」
「五月蝿いなぁ」
明日は土曜日、終電帰りで遅起きコース。
今の会話から推測できる彼の気持ちにも、正を表す右に傾いたスケールにも、気づくのは明日で良いか。
***
支離滅裂、ご愛敬。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます!許可とらなくても良いんですか...?やっちゃいますよ...?山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます!これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません! (2019年10月22日 10時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか?』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね? (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました!他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです!この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください! (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます! (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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