＿ ページ15
正負の皿が動かないことが何を表すのか。
他人への感心、興味が極端に薄いこと。
福良君の心中には、「なんとなくこの人とは付き合いやすいな」とか「馬があう人だなぁ」とか、そんなものが存在していない。
付き合うか否か、それは多分……その場の利益で決めてる筈だ。
私が取り入ることのできないタイプ、仲良くなれるか以前の問題に、私が不得意とする人柄。
それが表ではわからないのが余計に怖さを二割増しにしている。
「……畑田さん大丈夫？調子悪い？」
隣の席から同僚の声、我に帰る。
「えっ、そんなに険しい顔してました!?」
「ううん、元気なら良いの。ちょっと気になっただけ」
人に指摘されるほど顔に出てたか、危ない。
彼が来てからというものの、私の体調は日に日に悪化していく一方。
ため息をつく回数も増えたし、笑顔が減ったとまで言われる。
そのせいで。
「残業かよ畜生……」
花の金曜日だというのに、明日は休みなのに。
周りの照明は既に消されていて、まるで廃墟に独り立つ私だけがスポットライトで照らされているかのようだ、マジいらねぇ。
踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂。
「最悪ぅぅ……」
「あれ、畑田さん？」
「あ、ふ、福良君」
ちゃんと険しい顔を戻してから突っ伏していた顔を上げれば、ドア付近で大量の資料を抱える福良君が。
よりにもよってこの人かよ、いつもは信じない神様をこの日かぎりは恨みたくなる。
「先輩、残業ですか？」
「うん、ちょっとね……」
「僕手伝いますよ、何がありますか？」
「え、悪いよ新人君に。それに私のお給料減っちゃう」
「なら二人の秘密ってことでどうでしょう？」
何それ、と思わず聞きたくなるような量の紙の束、どこから持ってきたの。
此方の気を相手が知る筈もなく、脇へそれを置いて私の仕事を奪っていく。
他に誰も居ない仕事場、二人の秘密、やけに意識してしまう響きだ。
しかしこれが偽善であることが兎に角怖い、依然彼の天秤は揺らぐことを知らない。
生温い空気の中、無言とタイピング音の作業。
普段の私なら居心地が悪いと感じるだろう。
でも今はしょうがないか、あの凍った心見てるの気味が悪いし。
「しかし福良君凄いね、東工大出身だっけ？」
「肩書きみたいなもんなんであんまり誇れることじゃ……」
人に媚を売る人生柄だった以上、話を切り出すのは最早癖だ。
それに……話してないと、此方が滅入ってしまいそうだし。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます！許可とらなくても良いんですか...？やっちゃいますよ...？山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます！これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません！ (2019年10月22日 10時) (
レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか？』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね？ (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました！他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです！この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください！ (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます！ (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
