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「っ、すぐにその男の人を放しなさい!!」
兎に角まずは叫ぶ、怖じ気づいては調子に乗られるだけだ。
まぁ勿論ヤンキー共がそれだけで折れるはずもなく、ガンを飛ばしてきたり意味もなく喚いていたり様々。
まだ若い青二才ばかり、タイマンならワンチャン……勝てたりしそう。
だけど人数不利な今は囲われて惨敗するのは目に見えている、周りの通行人に私達の存在に気付いてもらわねばならない。
「えっ、駄目だって!逃げっ……」
「ハッ、ただの女一人に何が出来るってんだ」
「そんなにボコられてーのかよこのアマ」
一人が蹴りあげた空き缶が私の足元を掠める。
こうちゃん先輩、眼鏡はずり落ちてるし涙目だし、絶対私より怖いだろうに。
それでも此方の身を案ずる優しさに感動しつつも、そんな彼が置かれた状況、奴らの阿呆さに怒りがこみ上げてくる。
仕返し、制裁、それしか考えられないほど腸が煮えくりかえっていた。
薄汚い下品な笑いは、機械音でピタリと止む。
「この現場を録画してます、ついでに写真も何枚か。これを証拠とした上で警察に突き出しますからね」
わざと挑発的に、スマホをひらひらと翳す。
まだ在学中なのに問題起こしちゃ駄目だ、国家試験取れなくなるぞ、なんて頭ではちゃんと分かっている。
これは正当防衛、そうこじつけて思考停止。
此方の思惑通り頭に血が昇っている様子のヤンキー共、バラバラに殴りかかってくる。
「危ない!!」
先輩の心配そうな声。
スマホはポケットへ退避させ、顔面まっしぐらの拳をしゃがんで避ける。
その伸びた右腕を掴んで、脇に私の肘を挟んで内側に回る。
膝を伸ばして、一回転。
所謂背負い投げ、コンクリートの地面だから相当背中に痛みが走るだろう。
あと二回、そう意気込んだところで。
「痛っ……!!」
視界が揺れて嗚咽感が襲う、体の中のものが全て飛び出そうになる。
端に見えたのは棒状の物、多分鉄パイプが木材だろう。
先輩大丈夫かな、なんて心配してる間に、煩いサイレンと木霊する頭の衝撃を残して世界は黒に染まった。
目を覚ませば白だった。
アルコールの匂いに、ステンレスで囲われたビルだらけの景色に、誰も居ない個室。
病衣服の着心地は楽で、痛みも倦怠感も感じられない。
デジタル時計は最後の記憶から二日後を指していた。
それをうけて真っ先に浮かんだのは、好きなアニメの録画をしたかどうか。
それと、こうちゃん先輩が無事かどうか。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます!許可とらなくても良いんですか...?やっちゃいますよ...?山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます!これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません! (2019年10月22日 10時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか?』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね? (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました!他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです!この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください! (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます! (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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