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荒野に佇むのは、長髪を揺らす私だけ。
無事とは言えないだろう、奴の放った一発が私の右頬を掠ったのだから。
しかし女性一人で大の大人二人をいなしたのだ、大した戦果でもある。
どうにかして次の国なり人の居る場所へ行かなくては。
このままのたれ死んでしまっては元も子もない。
「……くっそ、痛いな」
地面に深紅のシミを付ける。
この世界の月は紅い、人々は血にも似たその色を恐れ、夜は忌まわしき時間だとしている。
これは、旅で訪れた今までの地で大方該当するもの。
逆に日光は月光と対比されるからか、蒼い神秘の光と比喩される。
私は赤の方が落ち着く。
生死に寄り添う、生物を象徴する色。
「荷物は回収しておかな__」
言い切る前に、私の鼻先を何かが掠る。
直線を描いて大地を横切るそれは__
残り、一発。
「ライフルかよ!!」
音だけが判断元だが、多分放たれたのはライフルの弾丸。
リボルバーとは明らかに射程が違う、私の射撃の届かぬどこからか撃ち抜かれて終わりだ。
ならば、私も対抗するまで。
六発が切れた時の三つ目の対策法、それは荷物の脇に括られたグレネード。
弾道は遅くとも破壊力は抜群、巻き添えになれば致命傷は免れない。
「このっ!!」
先ほどの発砲の方角に向けて威嚇射撃、これでもうリボルバーは一旦弾切れ。
なるべく早い動きで鞄へ手を伸ばす、刹那。
無情な音は、私を貫くことはなかった。
撃ち抜かれたのは私の鞄。若干下方向へと撃たれたそれは、地面を跳ねて私から逃げるような軌道で荒野を転がる。
相手は後ろだ、私は振り向き様リボルバーを構える。
「……弾切れやろ、ハッタリかましてもわかっとるねんで」
「……さて、どうだかね」
「弾が少なかったから、さっきの二人に牽制するんを躊躇っとった。かなり一発一発を大事にしとったし。荷物を取るにしても、俺への牽制が一発ってのも少な過ぎ」
「……観察力が鋭いことで」
聞き慣れぬ言い回しの声の主は、逆光効果でよく見えない。
至近距離で向けられたライフルの銃口は照らされて黒光りしている。
「せやけど、女性云々を抜きにしても腕前は中々。今ここで殺すには惜しいよな」
「……情けでもかけてんの」
やっと見えたその姿は、若い男。
まるで、私の頬を伝う鮮血のような赤い髪に、光の差さぬ瞳。
もし誘いを断れば、私は一瞬にして貫かれるだろう。
差し出された手を握り返す他、私にとれる選択肢はなかった。
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杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(???)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(?)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(?) (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…!私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…?(語彙力なくてすみません)のがみたいです!検討していただけたら幸いです…! (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(?) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
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