Apatite

二人で潜れば＿ymmt ページ41

今朝、モーニングコールの代わりにやって来た通知は、もう何度目かも分からぬ友人からの合コンへのお誘い。

彼奴が集める女性の中には、どうせ自分が心惹かれる人など居ない……ということがこれまでの経験則だ。

申し訳ないが、決して皆顔立ちが整っていないという訳ではないという所を誤解しないで欲しい。

結構面食いの気質がある僕でも容姿は悪くないと思う子は居るのだが、どうも話が合わない人ばかり。

しかし僕もそろそろ二十代半ば、流石に気になる相手位は見つけなければ。



「明日は休み……」



スマホのスケジュールを確認すれば、カレンダーの枠内に赤い文字で“なし”と書かれた明日の日付が。

今日の講義も午前のみ、集合時間には十分間に合うだろう。

『僕も行く』と簡素にメッセージを残して、どこか気だるい一日を開始した。



*



夜、これまでも何度かお世話になった居酒屋。

今日はどうやって群がる女性達を撒こうかな、なんてそんな事ばかり頭に浮かぶ。

店内には他の客もちらほら居て、入り口の俺に向かってアルコール混じりの空気が衝突する。

指定の席に向かえば、合コンメンバーが団体席を二つ陣取って既にてんやわんやしていた。



「おおー、遅かったなぁ山本ぉ！」



頬を不自然に赤く染め、既に呂律が若干拙い友人……とよく似た症状の周りの女性。

相変わらず酒に手を付けるまでが早い。

意識障害はあれど注意散漫になった状態では、折角会えた人ともちゃんと話が出来ないではないか。

空いている席はないか、と周りを見渡すのと同時に人の品定め。

今回はあんまりかな、なんか来て損した気分。

どっかのスポーツブランドの靴を脱いで、和柄の座布団に腰を下ろす。



「ね、山本君って言うんだよね？」


「早稲田大生なの？頭良いんだぁ！」



案の定、友達が相手にしきれなかった女性達が此方へとすり寄ってくる。

彼女達の色んな種類の香水が混ざって、まだ呑んでもいないのに頭が割れそうになる。

格好に対して不釣り合いなメイク、張り付いた薄い笑み。



「……疲れるなぁ」



周りに人が居なくなったタイミングで愛想笑いを打ち切る。

正直今すぐ帰りたい、帰って明日の予習でもしていた方が有意義。



「ですよね、波長の合わない人に付き合うのは苦痛ですし」


「えっ、聞いっ……」


「大丈夫です、私は肯定派ですから」



いつの間にか隣に居た女性は、鞄を肩から下ろしながら控えめに笑う、どうやらつい先程来たようだ。

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