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「……お褒めの言葉をどうも」
「なんか申し訳ないです」
河村さんの一抹の優しさすら、私には痛恨の一撃へと化け突き刺さる。
きっと皮肉ではなくて本心混じりなんだろう、なんか余計嫌だわ。
「……Aさんは、そんなに僕の脚が好きなんですか?」
脅しでも煽りでもない、真剣な眼差し。
きっと本当に好奇心と欲から出た質問。
空き教室、西日差す窓際にて。
声に出して肯定するのも躊躇いがあり、せめてもの意思表示にと頷く。
「成る程、残念だ」
「やっぱり引きました?」
「そうじゃなくて、僕は脚しか愛されないのかと思いまして」
河村さんとの会話では、いつもいつも疑問に疑問が重なる。
突拍子もない謎が更に不可思議な謎を呼んでいるのだ。
今も同じ、予想だにしないその意図の取れぬ答えに何も返せない。
「僕はAさんが好きなのに、その僕本体は愛されないんですね?」
「……愛っ!?」
「はい、Aさんはどうですか?」
怒涛の追撃、一切の余裕をも許さぬカミングアウトが私を襲う。
パーフェクトな脚を持つ河村さん本体を、私は一体どう思っているのだろうか。
「……多分、好きだと思います」
顔が、全身が、炎の中に居るように熱い。
河村さんが今どんな顔をしているのか、見たい気持ちと、目を合わせたくない気持ちと。
さ迷う眼の行き先は、やはり彼の下半身。
「それは脚だけ?」
「え、っと……」
「……仮に、Aさんからの回答が肯定だとしても」
目の前には河村さんの胸板。
上から降り注ぐように、角ばった手が私の頬を撫ぜる。
思わず上を向いたその瞬間、柔らかな感触が唇を拐っていった。
「こうやってぼちぼち、振り向かせていきますからね」
完璧な脚の彼は、どうやら私の心をも拐っていったようだ。
「……河村さん」
「如何されました?」
「好きです」
「……どこが?」
「全部」
初めて、その全てに恋した貴方へ。
だけど「どこが一番好き?」と聞かれたら真っ先に脚とこたえるのは不可抗力ってことで。
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杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(???)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(?)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(?) (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…!私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…?(語彙力なくてすみません)のがみたいです!検討していただけたら幸いです…! (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(?) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
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