いとあはれなるかたち＿kwkm ページ27
「拓朗っ!!」
小学生低学年の頃、君と手を繋いで過ごした初冬。
白雪で霞むの中、振り向きざまに俺の名を叫ぶ君が見せた艶笑が。
まだ垢抜けぬ年齢と行動の幼さながらに顔だけは色味を含んでいて、えらく趣があった。
当時八歳の俺を虜にするには、その一刹那は十分過ぎた。
俺がAに好意を寄せるようになってからというものの、俺は彼女の用心棒として隣に居るようになった。
俺自身は一介の幼なじみとして、彼女には感づかれぬよう最新の注意を払いながらも、周りに蔓延る男共を牽制してきた。
全てはあの笑顔の保護の為。
心配なのはAからの好感度、しかし元々あまり勘が鋭くない彼女を信用させるのは、正直勉強の応用問題より簡単だった。
小学生の間はそれで良かったのだが、中学生となると話は別。
中高一貫の男子校である灘中へと進む俺は、市立の共学中学校へと進んだAとは一旦の別れを告げなければならなくなった。
「拓朗……灘行くんや……いつの間にそんな偉い人になってもたん？」
「なんか止めてくれん？」
「ごめんごめん、でも凄いな。素直に尊敬するわ。あーあ、拓朗居らんくなったらうち寂しいなぁ！」
卒業式の後、クラスメートや先生との別れを惜しむ時間。
小学六年生とは思えぬ幼稚さのAだが、その容姿はこの小学校生活で見違える程美しさを増していた。
あの笑顔も、昔の面影を残したまま、更に艶やかになっている。
「俺はそんな凄い人やない」
「嘘、拓朗はええ人やんか。うち拓朗が居ってよかったなーって思っとるで？」
「……なんか一生の別れみたいになっとるやん」
この無垢な彼女の瞳は、俺のことを善人として写しているらしい。
なんて馬鹿正直で真っ直ぐなんだろう、彼女の頭には“疑う”という言葉がないのだろうか。
それすらいとおしい、一生をかけて守りたくなる代物。
……ここから六年間、この素敵な素敵な彼女が俺の護衛も無しに公の場に晒されるのだ。
もし、もし再会した時に「相手が出来た」なんて聞いたら、俺はどうするだろう。
出来るならば彼女と一緒の中学、高校に進みたかった。
渦巻く恐怖、そして強欲。
「＿＿朗、拓朗！」
「っ、どしたん」
「体調悪いん？顔色悪かったから」
人の心配を他所に、また彼女は俺を虜にする。
まさに堂々と咲き誇る可憐な華、悪い虫は幾らでも寄ってくる。
「何かあったら連絡してな」
「うん！」
何としても守ってみせなければ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(？？？)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(？)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(？) (2019年10月8日 21時) (
レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…！私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…？(語彙力なくてすみません)のがみたいです！検討していただけたら幸いです…！ (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(？) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
