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「……A?おーい」
ハグを要求され数十分、目の前の彼女からぼやくような声すら聞こえなくなった。
代わりに規則的な呼吸音が僕の鼓膜を揺らす。
「昼間っから見せつけておいて寝るとかメンタル強っ!!」
元いた場所であるソファーにAを寝転がせ、外野の声は気にせずに毛布を探しに行く。
言わないけどさ、須貝さん。
頼むから睡眠中の人の近くでいつもの声量出さないでよ。
「たしかこの辺にーっ……」
僕が探していたのは、いつかオフィス泊まりの為に持ってきた人工羽毛の掛け布団。
長らく放っておいた一品だけど、幸いにもそんなに匂いとかは付いていなかった。
それを手にもう一度ソファーまで戻り、安らかに眠るAの身体に掛ける。
あまりに寝顔が無防備だから頬をつついたりするけど不可抗力。
「あれ、こうちゃん。掛け布団にするなら此方があったのに」
伊沢さんが言っているのは、メンバー内で使い回してる茶色いタオルケット。
これだけ人数が居ればエアコンの温度調節とか大変だし、主に寒がりな河村さんとか季節感ゼロの誰かさんとかが使ってる。
わざわざ別室から僕のを持ってくるより早いのに、と言いたいのだろう。
「伊沢ー、理由なんて明確でしょ」
「いやそうだけどさ?こうちゃん弄るの面白いから〜……」
「というか前から気になってたんだけどさ。こうちゃんってかなりAちゃんのこと溺愛してるよね?」
「というか甘やかしてる……?この間もわざわざダッツ買いにコンビニ行ってたじゃん」
「あーそれ!結局奢りになったヤツでしょ?甘々じゃんこうちゃーん…」
皆が口々にする通り、僕が今頬を撫で回してる彼女は、かなり僕をこき使う。
カレカノというか、まるで我が儘令嬢とその執事みたいな僕達の関係性。
「いやぁ……僕ってただ我が儘を聞いてるように見えます?」
「超見える」
須貝さんが“超”を強調して答えれば、他の二人も只々頷くばかり。
やっぱりそう見えてるんだ、溺愛してるんだ。
それはつまり、彼女は僕になら我が儘をふっかけても良いと思っていると他人からも思われている訳か。
事実、彼女の我が儘の殆どは僕に向けられたものだ。
このまま彼女が突き進めば、いつか彼女は……否、既に僕に依存しかけているだろう。
僕無しでは生きられない位まで彼女を溺愛してやるんだ。
だから、単純で可愛い君は傲慢なままで、ずーっと僕を尻に敷いていると勘違いしててね。
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杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(???)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(?)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(?) (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…!私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…?(語彙力なくてすみません)のがみたいです!検討していただけたら幸いです…! (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(?) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
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