Apatite

溺愛性依存症＿ko ページ13

「こーちゃん……」


「どしたー？」



QuizKnockの皆の仕事場であるオフィス。

そこにお邪魔させて貰っている私は、ソファーに寝そべりながら彼氏であるこうちゃんの名を呼ぶ。

パソコンとにらめっこを繰り広げていても、コーヒーを嗜んでいても、こうちゃんは出来る限りの作業を必ず中断してやってきてくれる。

現役の東大法学部生、歌も上手ければ数学の最高偏差値は脅威の98、超自慢の彼氏。

比喩表現である“飛んで来る”という言葉が、本当に飛んで来てるようになっちゃう位健気な人柄。

大袈裟なようで本人にとっては一生懸命な言動の一つ一つに既に癒される。



「ぎゅーして、ぎゅー」



更なる癒しを求め、私はこうちゃんに向かって腕を広げハグの要求をする。

“はいはい、仰せのままに”と応じてくれるこうちゃん、みるみるうちに心地よい体温に全身を包まれる。



「まぁたAちゃんがこうちゃんを使役してるー」


「すっかり溺愛しちゃってるじゃん。Aちゃん可愛いからわかるけどさ」



外野にいるメンバーからは各々の声があがる。

冗談めかすような伊沢さんの口から出た“可愛い”という言葉にえへへ、と笑えば心なしか圧力が大きくなって。

こうちゃんの胸に顔を埋めているからわからないけど、多分牽制してるんだろうな……

彼の真っ直ぐな性格上容易に想像できてしまう、なんだこの可愛い彼氏は。



「まぁイチャつくなとは言わないけどさ、それで仕事遅れたら二人とも容赦しないよ？」


「うわ福良さん鬼！あとAは関係ないでしょ!!」



ネットでは穏やかとかいうレッテルを貼られている福良さんだけど、多分メンバーにはそこそこ黒いと思う。

そんな事実とかさりげなく私を庇うこうちゃん格好いいとかは置いといて。

やはり他人から見れば私は悪女というか、我が儘な女性に見えるらしい。

確かに私は少し要望が多いというか、我が儘である部類に入るんだと思う。

自覚はしてる、けど別に困ったことはそれほどない。

“好きには好きで、嫌いには嫌いで返す”という性格が余計に性の悪さを増幅させているのが事実。

そんなだから、いつも何かと私を優先してくれるこうちゃんには好意の裏返しで注文をつけてしまう。



「Aー、まだぎゅーしとく？」


「んー……」



いつものお決まり、生返事による肯定の意識を見せる。

こんな悪い女に捕まっている彼がいとおしい。

彼の体温と匂いと甘さに包まれ、私の意識は夢へと誘われた。

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