Trial Lover 〜お気に召しました？〜１

すれ違い ページ48

「···私を否定しない人だよ。どんな私でも受け止めてくれる優しい人。タケルくんとは全然違う」




「俺への嫌味かよ」




タケルは掴んでいたAの手を離す




「別れた女が綺麗になって幸せそうにしてると···取り返したくなるな」




タケルはAを壁際へ押し付けると首筋に唇を這わせ




片手は身体をなぞるように動いて




嫌悪感しかないその行為にAは全力で抵抗する




「やめて触らないで!!」




Aが抵抗しタケルを押し返す




その姿を見たタケルは不機嫌そうな顔で





「チッ。相変わらず真面目でつまんねぇ女だな」




そう言って路地裏から出ていく





追いやられた壁際から滑るようにしゃがみ込み





夏希の事やタケルの事で頭はいっぱいで




なんなのよもう·····




泣けてくる





路地裏の入口から足音が聞こえ




タケルが戻ってきたのかと身構えるように入口を見る




「やっと見つけた」




そこにはマサイが居た




マサイの顔を見れば夏希との事が頭に浮かび




「Aを探しに外に出たらここから出てくるタケルとすれ違って。こんな所で何してたんだよ」




「··········」




「なんでタケルと２人で居た？何があった？」




優しい口調で問いかけるマサイ





「···マサイこそなんで追いかけてきたの」




質問に質問で返す




「突然帰ったら心配するだろう？電話も全然出ないし」




頭の中はぐちゃぐちゃで




マサイは悪くないとわかっているのに夏希との事を責める気持ちになる自分が居て




「タケルと何かあったのか？」




心配そうに聞くマサイ




「タケルくんに···抱き着かれた」




「はっ？なんで？」




「知らない。私が聞きたい位だよ」




Aから何かする事はないとわかっていても嫉妬からマサイの語気が強くなり




「なんで２人になった？なんで俺から離れたんだよ」



その言葉にAは堪えてた気持ちが爆発して




「なんで私を責めるの？そういうマサイはどこにいた？···夏希ちゃんと何してた？」




Aから夏希の名前が出て狼狽するマサイ




「·····言えない？」




Aに言えばきっと傷付け泣かせてしまう




マサイはそう考え先程の出来事は自分の中にしまっておくつもりだった




Aの口調から見られていた事、そのせいでAは出ていった事を悟った

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