やがて麻痺して ページ8
自由でいたかった
常識、束縛、倫理観
そんなモノは大嫌いで
ただ好きに生きていた
小さい頃からそうだった
愛された記憶がないから
父も母も私には無関心で
まるで家庭を持つという体裁の為に産んだかのように
私が話しかけても
「今忙しいから」
「あとでね」
住む所があってご飯が食べれて
数えきれない玩具やゲーム
一方的に与えられた物達
そんな物が欲しかったんじゃない
毎日誰も居ない家に帰る
テーブルにはお金が置かれてるだけで
そのお金で夜通し遊び朝に帰っても誰も私を気にも留めない
ただ愛が欲しくて
一瞬だけでもいい
愛されてると感じたくて
幾度も知らない誰かと身体を重ねた
空っぽの身体に愛を注いで欲しくて
けれどその器は決して満たされる事がなく
《愛してる》
時折誰かにそう言われても心が満たされる事は一度もなかった
彼氏がいても欲しいモノは求めて
ないものねだりを繰り返して来た
モトキと出会った時もそうだった
女性慣れしてなさそうなモトキを見て誘い
恋人になってからも他の男と一夜を過ごした
拓真とも同じ時を過ごし
一度だけ拓真との避妊に失敗した日に出来たのが優真だった
妊娠を告げると拓真は
「あの時に出来たんだよな···朱里、結婚しよう。順番は逆になっちゃったけど。２人でお腹の子を育てよう」
そう言って微笑む拓真
「私···子どもは苦手···どう接したらいいのか分からないし」
愛されて来なかった自分が子どもを育てるなんて無理だと
きっと愛せない
そう思った
「産んだらきっと気持ちは変わるさ。俺達の子なんだから」
押し切られる形で拓真と結婚し
モトキの前から姿を消した
拓真と買い物中、振り向くと虚ろな目で自分を見つめるモトキと目が合い
「拓真、なんか体調が悪いの。すぐ帰りたい」
「大丈夫か？分かった、すぐ帰ろう」
そう言って足早に店を後にし
私はモトキから逃げた
傷付いたモトキを独りにして置き去りにしたんだ
罪悪感すら持たずに
モトキの過ごした時も
モトキの気持ちも
全て過去へと葬り捨て去った
そんな生き方しか私には出来なかったから
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作者名：JADE | 作成日時：2023年2月21日 19時
