慈悲の雨 ページ22
「あぁ〜美味しかった！」
満足そうな表情で食事を終えたA
「美味しかったね。....こんな風にAと過ごせる時間ももう終わりだと思うと淋しくなるな」
スマホを手に時間を確認するモトキ
「またいつか２人で台湾に来ようよ。日本の観光客も多いと思ったけど全然会わなかったね。時期的なモノなのかな？」
Aは辺りを見回しながらモトキへ話しかける
「確かに全然会わなかったね。台湾のファンの人は会ったけどAの事はスタッフだと思ったのか全然気にしてなかったし」
「台湾って穴場なのかもね。ねぇ、それ貰うよ。捨ててくるから」
Aはそう言って立ち上がりモトキが手にしている空き容器を受け取り
「ありがとう。そういえばこれ買ったお店の人、日本の人だったよ。夜市で働いてる日本人ってなんか珍しいよね」
モトキの言葉に軽い相槌をうちながらAは露店へと近付いていく
-ポツ-
Aの頬を雫がかすめ
上を向けば空からゆっくりと降り注ぐ雨がAの頬を濡らし
「....雨？」
そう呟いた瞬間、勢いを増した雨粒が一気に地上へと降り注いだ
Aは慌てて露店の下に入り
一瞬でずぶ濡れになるような雨に道行く人は一斉に屋根のある場所へ散り
「Aー！そこで待ってて！」
モトキはAにそう伝えると視界を遮るような大雨に驚いた表情を見せながら自身の後方にある店へと走り出す
「びっくりした...何この大雨」
魯肉飯を買ったお店の軒下
ゴミを捨て濡れた髪を整えるA
「....大丈夫かい？」
Aの背後から日本語が聞こえ
「凄い雨だな。風邪引くからこれで拭きな」
その声に振り向くとタオルを差し出す日本人がそこに居た
モトキが言ってた日本の人かな
「すみません。じゃあお言葉に甘えて...」
タオルを受け取りAはお礼を告げる
白いキャップを被った男性は微笑むと
「雨が止むまでそこにいていいから」
キャップのせいか目元はあまり見えないが穏やかな口調で話す優しげな男性
「ご迷惑おかけしてすみません。彼が戻ったらすぐ退きますね」
あの感じだとモトキは傘を買いに行ったのだろう
Aはそれまでモトキに言われた通りここで待つ事にした
「大丈夫。気にしなくて良い」
そうAに告げ男性は仕事を再開し始めた
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作者名：JADE | 作成日時：2023年2月21日 19時
