いつしか思い出に変わるとして ページ28
マサイの誕生日当日
Aはクローゼットを眺め腕を組む
可愛い格好した方がいいのかな···
でも張り切ってると思われて気持ちに勘付かれたくないし···
秋人と別れ数日
マサイにはまだ打ち明けていなかった
Aは服を決め着替えメイクを施し
鞄とショップバッグを手に玄関へ向かう
前もって用意したプレゼント
マサイに似合いそうなジャケットを選んだ
気に入ってくれるといいけど
ラッピングされた箱を見つめ思わず微笑む
秋人と別れた事で罪悪感を持ちながらもどこか気持ちが軽くなったA
もう騙さなくていい
愛する努力もしなくていい
忘れようとしている時点で忘れられる訳なんてなかったんだから
そう吹っ切ると全てを受け入れた
マサイにこの気持ちを明かす事はない
マサイに彼女が出来るまででいい
側にいられるだけで充分だと
幻の女だという事を隠し
この気持ちも隠す
嘘に塗れた自分
幻の女だと打ち明ければ嘘が何よりも嫌いなマサイに拒絶される
気持ちを打ち明ければマサイは迷惑だと思うだろう
好みでもない相手から好意を寄せられたって嬉しい訳ないのだから
どちらを選んでもその後、失くしたくないと願うこの居場所はなくなる
初めて続いた仕事で得たこの居場所
居心地の良いこの居場所を守りたい
ただそれだけだった
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マンション前で車を停めAが出てくるのを待っていたマサイ
久しぶりにAと食事に行ける
それだけで嬉しかった
いつもよりオシャレをして
鏡の前で何度も髪型を直す
俺、浮かれてんな···そう笑った
エントランスから出てくる人影を見つめ
いつもと違う大人びた格好で出てくるAを見付けた
「お疲れ様です。そしてお誕生日おめでとうございます」
そう言って助手席に乗り込み笑顔になるAにマサイは嬉しそうに笑い
「ありがとう。今日無理言って悪かったな」
「いえ、お気になさらず。あとすぐにわかっちゃうので渡しておきます。誕生日プレゼントです」
ショップバッグをマサイの前に差し出す
「プレゼントはいらないって言ったのに···本当にありがとう···開けてもいいか？」
「どうぞどうぞ。気に入らなくても文句は受付ませんからね」
嬉しそうにラッピングを開けるマサイをAは優しげな眼差しで見つめる
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作者名：JADE | 作成日時：2023年1月16日 22時
