傷は埋まれどその痕は消えぬ儘に ページ18
「メイクで隠してるんですけどね。隠しきれなくなってきたし今日は頑張って爆睡しますよ」
そう話すAの笑顔はどこか痛々しくて
「···この間の事で怖くて眠れねぇのか?」
「それも少しあります。まだ夜になると思い出しますから。でも違う理由です···。その内眠れるようになりますからご心配なく」
「岸に居てもらえばいいじゃん。彼氏が側にいれば安心出来るだろ?」
俺は側にいられない
虚しさを感じながら話すマサイ
「どうなんでしょう。付き合って1ヶ月半位経ちましたけど···まだ本心は見せれません。大切にしてくれてるって分かってるんですけど」
愛せないのだからそうなって当然で
「····ズケズケ言うその性格を岸はまだ知らねえって事か。早く見せて本当の自分で過ごせよ。見せたら速攻でフラれるかもだけど」
クスクスと笑うマサイに
「だから見せません。フラれたらもう彼氏出来なさそうなんで。岸くんが最後の希望ですから」
岸にしがみついてもないのにそんな言葉を言って
マサイへの気持ちをひた隠すんだ
「フラれたら·····俺がもらってやろうか?」
その言葉にAは固まり
また冗談を言ってからかってる
そう思いたいのにマサイの瞳は真剣で
「····っもう。またからかってますよね。私をからかって遊ばないで下さい。好みじゃない相手にそういう冗談言ってもすぐバレるんですからね」
平気なフリをして精一杯言い返した言葉
「·····バレたか。からかうと面白いから。ちょっとはときめくかと思ったのにつまんねぇの」
マサイもふざけたフリで本心を隠す
「お互い好みの許容範囲外なんですからその冗談では騙されませんよ。残念でしたね」
それから2人は電話越しではなく
互いの顔を見ながら話し
「じゃあそろそろ帰りますね」
本当はずっとこのままでいたい
互いにそう思っても口には出せず
「だな。送ってくよ」
「いえ、まだ明るいし電車もあるので」
「いいよ、俺も用事あるしついでだから」
立ち上がり出る準備をするマサイを見て
あともう少し一緒にいれる
そう思うと頬は綻び
「じゃあお言葉に甘えます」
マサイの車でAの自宅へと向かう途中
「あのさ···」
マサイがAに話し掛ける
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作者名:JADE | 作成日時:2023年1月16日 22時