あどけない寝顔 ページ11
「迷惑なら行ってねぇよ。どうでもいい相手なら電話無視してそのまま寝てるわ」
Aを見ずモニターを見つめ作業するマサイが答える
「···約束···破った事···怒らないんですか?」
「·····約束したのにって···腹立ったけど·····怖い目にあった奴を責める程馬鹿じゃねぇよ」
抱えた膝に顔を埋め泣くAに
「無事って訳じゃねぇけどさ···取返しの付かない事にはなってなくて安心はしてる」
あのまま襲われ続けていたら
一生消えない傷が残っただろう
「今回の事でわかったと思うけど···そういう奴は女なら誰でも狙うんだから。2度と歩いて帰ろうとしなければそれで良い。今度からは岸に伝えて遅くなるなら迎えに来てもらうようにしろよ」
「はい·····すみませんでした」
顔を埋めたまま謝るAを見てマサイも胸が痛んでいた
恐かっただろう
知らない男に引きずり込まれて触られて
抱き締めて大丈夫だと安心させてあげたい
でも··それは俺がやってはいけない事で
触れたいと思う手を強く握り耐える
「···明るくなったら送って行くから···少し寝とけ。最近残業続きで寝てないんだろ?·····つーかなんで最近そんなに残業が多い訳?前は全然してなかったじゃねぇか」
優奈の尻拭いをしてるとは言えず
「··········」
黙り込むA
「言いたくないなら別にいいけど」
マサイは立ち上がり寝室から毛布を手に戻り
「少しで良い。寝ろ。俺はここで作業してるから」
Aを横にさせ毛布をかけるとマサイはまた座りソファーにもたれながら作業を続け
「マサイさん···ありがとうございます」
マサイの匂いに包まれ
Aはマサイの背中を見つめていた
タイプ音が響く部屋
側にマサイが居る
その安心感
Aは緊張と疲れから安心感を感じた途端に眠りについた
そっと後ろを向けば眠るAの姿
毛布から滑り落ちた手に触れる
泣きながら電話をしてきたAの声に心臓が締め付けられるようで
俺の顔を見た瞬間泣き出したAを見て胸は更に痛み
間違いだったとしても自分に助けを求めてくれた
それが嬉しかった
マサイはAの手を離しソファーに持たれるように眠った
今だけでも側にいれればいい
朝には別の男の元へ戻るんだから
打ち明けられない気持ちを隠し続け
見守る事しか出来なくても良いと
そう思った
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作者名:JADE | 作成日時:2023年1月16日 22時