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「雨、止みませんね…」
「そうですね…」
次は彼がぼそっと呟いた。
何気なく口から出たのかもしれないけど、かれこれ30分くらい経ってるし、もうそろそろ意を決して帰ったほうがいいんじゃないかな…
走れば家なんてすぐだし!
なんだか急に、非日常的な空間に2人っきりっていうのも気恥ずかしくなってきて
「長居してすみません、家もすぐですし出ますね、」
「でもまだ…」
「走ればすぐで!本当にお世話に、」
「あ、あの、送ります!」
「へ?」
「雨きついし、暗い中、女性ひとり危ないです。」
「そんな…」
「ここももう閉めますし…あまり遅くなってもアレだし…ちょっと待っててください。ほんと、待っててくださいね」
彼はもう一つキャンドルを焚いて、奥へ消えていった。
これは本当に申し訳ないことになってしまった…
もうタクシーあるだろうと思って調べると、どこも空っぽで待つには1時間かかるみたい…
「お待たせしましたー…」
私服に着替えたであろう彼はカバンと傘を持って出てきた。
「本当に大丈夫ですよ、お気遣いありがとうございます」
「……あ、すみません、家とか知られるのいやですよね…」
「全然!そういうことじゃないんですけど…」
「まぁ…道一緒のとこまでとりあえず行きましょうか」
小さなキャンドルが照らす彼の顔は、眉をハの字にして少し困った顔をしていたけど優しさに包まれていて
あんなにお花を大切にする、コーヒーも丁寧に淹れる彼だよ
本心からの優しさで言ってくれているんだと、
その思いやりを無碍にするなんてできないと感じて
「すみません、ありがとうございます」
「じゃあ帰りましょうか。…そこ、気をつけてくださいね」
足元をキャンドルで照らしてくれる彼に甘えることにした。
が、カバンに入れていると思い込んでいた折りたたみ傘がないことがドアの前で発覚して、自分の情けなさにさらに自己嫌悪に陥った。
「今日雨だなんて誰もわかんなかったですよ」
1本しかなくてすみませんと、またも困り顔でいう彼。
「本当にすみません」
「こちらこそです…」
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Chapi(プロフ) - ふーさん» ふー様 お返事が大変遅くなり申し訳ございません!素敵なご感想をくださり、ありがとうございます。私自身慌ただしい日々の中で心落ち着かせる時間って大切だなと思うので、届いてくださって嬉しいです。ゆったりではありますがこれからもよろしくお願いいたします! (2022年12月11日 21時) (レス) @page39 id: bb7ad5c321 (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - 更新ありがとうございます!このお話読んでいると私の時間までゆっくり流れるような気がして、世界が少し優しくなります。ありがとうございます!次の更新も楽しみにしています^^ (2022年10月24日 19時) (レス) @page38 id: aa1a944516 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chapi | 作成日時:2020年9月14日 23時