31.覚悟 <ハンビン> ページ33
.
(ハンビン サイド)
「ハンビン! 遅刻するわよ〜!」
お母さんの声が聞こえて、目をうっすらと開けた。
何だか、身体がすごく怠い。
近くにおいてあった体温計を手に取って熱を測ると『37.4℃』と表記された。
……微熱過ぎる。学校には行けそうだけど、行きたくない。
昨日の電車の光景が、ずっと頭で流れていた。
いつか見た思い出深い映画とかドラマのように、永遠に1シーンだけ再生される。
マシューのこと、言った時。Aちゃん、顔赤くなってたな。
悟ってしまった瞬間だった。
あぁ、Aちゃんが好きなのは僕じゃなくて、その親友なんだと。
それを察した時からいつもみたいにうまく笑えなくて、Aちゃんの前では何があっても笑顔でいると決めていたのに、それも無理だった。
ただ繋いだ指は離したくなくて、彼女が下りるまでずっと離さなかった。
僕を心配するような彼女を見て、何とか作り笑いで「じゃあね」と言えた。
心配させたくない、気使わせたくない。
けど、実は心配してほしいしもっと僕のことを見てほしい。
僕がAちゃんしか見れていないのと同じように、彼女もそうであればいいのに。
なんて思ってしまう自分がすごく嫌になった。
嫌がらせ受けていた件なんて何も知らなかったし、自分はそう言う事に疎いのかと言われてもそうではない気がする。
ただ、頑として「心配かけたくない」彼女の強さが出ただけな気がする。
「ごめん、今日学校休む」
「え!?具合悪いの?」
「うん……」
ごめん、と母に謝るとすぐに納得してくれた。
普段が優等生で良かったと思う。学校に行きたくないときはすぐに休めるから。
LINEを開くと、Aちゃんから「おはよう」とだけメッセージが来ていた。
……もう、「好き」と告白してしまおうかな。
もっと意識してほしい、そう思って素直に自分の思いは伝えてきたつもりだったが、
当の本人である彼女はドが10個くらいつくほどの鈍感だった。
鈍感、というか自分に自信がないのか。
普通ならもっと自意識過剰になってもいいくらい僕は攻めているつもりなのに、全く効いていなかった。
「……よし」
覚悟を決めた。
誰かにとられる前に、奪われる前に。
5年間も思い続けた相手だ、誰にも取られるわけには行かない。
この高校も選んで死に物狂いで勉強した理由だって、彼女なんだから。
だから、もう。
それが自分の親友だとしても、誰かに絶対にとられたくなんてない。
1246人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヨルの最中(プロフ) - あゆみさん» コメントありがとうございます!励みになります〜☺️ (2023年4月2日 0時) (レス) id: 3ee7ed234a (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 一昨日この素敵な作品を見つけてもうここまで読んでしまいました🥹❤️大好きです!!これからも素敵なお話楽しみにしてます🫶🏻 (2023年3月26日 0時) (レス) @page47 id: d903579d41 (このIDを非表示/違反報告)
ヨルの最中(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます‼️ 嬉しいです🥲 (2023年3月25日 23時) (レス) id: 3ee7ed234a (このIDを非表示/違反報告)
ヨルの最中(プロフ) - スヨンさん» 引き続きコメントありがとうございます〜😭❕ (2023年3月25日 23時) (レス) id: 3ee7ed234a (このIDを非表示/違反報告)
ヨルの最中(プロフ) - しのさん» コメントありがとうございます🥲 ジャンハオ会長、書いていて楽しいです🥲 (2023年3月25日 23時) (レス) id: 3ee7ed234a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨルの最中 | 作成日時:2023年3月17日 23時