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『もって1年ですね。最悪の場合、10ヶ月生きられるかどうか』
確かに、私の耳にはそう響いた。
「…卒業までにもつって言ってたじゃないですか」
ポタッ、と点滴のように窓辺に水滴が落ちてくる。
『…何か、重いものを持ったりはしませんでしたか?』
「…どう言う事ですか?」
『…重いもので心臓が圧迫されてだいぶ弱ってるように見えます。…おんぶや肩を貸すような形式で持ちました?』
「そんな、心当たりなんて___」
ぁ…兵助君…もしかしてあれが原因?
『とにかく、ここ一週間はおとなしく生活すること。間違えても走ったり長時間乗り物に乗らないで』
「そんな…」
もうすぐ陸上部で大会があるから、応援しに行こうと思ってたのに。
ザアアアアアと、窓に打ち付けられる雨は強くなっていくばかり。
『…薬出しておきますね。』
病院から出ようとした入り口で、予想以上に降り続けていた雨に気づく。
「傘がないわ、どうしましょう…」
隣にいたおばあちゃんに話しかけるように呟いた。
『あぁ、私は濡れて帰るよ。』
「え?どうして、お婆ちゃん。風邪ひいちゃうわ。」
『良いんだ良いんだ、私は明日にでも消えちまう。それなら、無邪気に終わった方がいいじゃないか!」
ハッハッハと大きな笑い声をあげてお婆ちゃんは大雨の中を歩いて帰ってしまった。
私も、死んじゃうのにあんなに笑えるのかな?
あんなに_____おおらかで過ごせるの?
自問自答をした暗い気持ちで病院を出て、アスファルトの上にしゃがみ込む。…どうして。
ザカッザカッと大きな足音がした。お婆ちゃんのお迎えさん…?だとしたらすぐに教えなくちゃ。
「あ、あの_____」
ぐいっ、と傘を突きつけられポカンとする。
ゆっくりと顔をあげると、そこには_____
「翡翠ちゃん、こんなとこで何してるの?」
「ッ…尾浜君…?」
「覚えててくれたんだ、良かった…俺今帰りなんだー。こんな雨の中じゃ風邪ひくから!はい、この傘あげるよ!!そこら辺で買った安物で悪いけど…」
「それじゃあ尾浜君が…」
「いいのいいの!」
こんな雨の中じゃ風邪ひくってあなた今自分で言ったじゃない。
そう言ったら尾浜君は「体丈夫だから平気。」と笑って、そのままパシャパシャと、大きな水溜りと化したアスファルトを上を走っていってしまった。
…尾浜君、部活どうしたんだろう。サボりかな?
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May - 続きがとても気になります、、、!!!!!!!!! (2022年1月28日 21時) (レス) @page1 id: a474d6d957 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきの | 作成日時:2019年4月30日 23時