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敦は自分の頬を掻きながら少し恥ずかしそうに答える。
「前は心配でしたけど…絶対無傷で帰ってくるので慣れちゃいました。それにAちゃんは僕達よりずっと強いので」
芥川はそれに微かに頷く。
「…そうか」
相澤は目を細めて二人を見つめた。
この二人は清原を心から信頼している。
それが改めて知れた相澤は密かに安堵した。
「いつ帰ってくる」
「小さな組織なので一日で片付くと言ってましたけど…」
コツコツと、足音が響いた。
それと共に何かを引き摺る音も。
「あ！Aちゃ、ん…」
敦は振り返り変なところでくぎりをつけて話した。
言葉の最後は小さくなり「ん」は殆ど聞こえなかった。
相澤も振り返るとそこには何時もと変わらないAの姿。
そしてその後ろで引き摺られている男を見て顔を強ばらせた。
男はロープでぐるぐる巻きにされ、呻きながら体を捩らせて逃げようとしている。
一方Aは普段の顔のまま片手に持ったロープをぐいっと引っ張った。
男は床を滑り苦痛の声を上げる。
「只今。想像以上に雑魚ね、武装してるだけで全く強くない。」
そんな男の事は微塵も気にしていないAに敦が恐る恐る声をかける。
「…Aちゃん？この人は…」
「ボス、口割らないから連れて来た。」
芥川も何かを察したのかそっと口を開く。
「…つまりは」
「拷問ね。色々吐いてもらわなきゃ」
さあっと顔を青ざめた二人の前を通り過ぎ、Aは男を連れて保健室に入った。
二人はそれを青い顔で見届ける。
敦がそっと相澤に声をかけた。
「耳塞いでた方がいいですよ。」
今まで黙って見ていた相澤は訝しげな顔をして敦を振り返る。
何でだ、と聞こうとしたが敦は既に自分の手でしっかりと耳を塞ぎ、目を瞑っていた。
芥川は目は開けているものの耳は塞いでいるので相澤は諦めた。
刹那、
「ひっ、ややめてくギャァァァァァ！！」
天に届くような絶叫が保健室から響いた。
聞いてるこっちまで恐ろしくなる叫びに相澤も咄嗟に自身の耳を塞ぐ。
耳を塞ぐ理由はこれか。
二人の青ざめた顔を見て相澤はそっと目を瞑る。
なるほど、Aなら一人で十分だ。
男の叫び声を聞きながら相澤は二人がAを信用し、恐れている理由が分かった気がしたのだった。
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作者名：Ainyami | 作成日時：2019年8月18日 11時
