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芥川は深呼吸をして保健室の扉を開いた。
「…A」
Aはぱっと振り向くと首を傾げる。
「あれ、何でコート持ってるの？」
普段に戻ったAに芥川はほっとする。
「(覚えてないのか)」
Aに近づくとコートを脱ぎ、渡す。
Aはそれを受け取ると丁寧に畳み、同じ引き出しにしまった。
「許可は貰った。約束も破ってない」
「そう？ならいい」
芥川はじっとAを見つめる。
それに気づいたのかAも見つめ返した。
「…A」
「何、龍」
またもたった一言。
それだけで芥川は心底安心したような顔をして、そっとAに近づく。
「…名前を呼べ」
Aはどうしたでも言わん顔をしたが何かを察したのか、少し微笑んだ。
「龍。」
芥川は小さく、頷いた。
Aは芥川の頭を引き寄せると自分の肩に押し付ける。
芥川はそれに抵抗せず、寧ろ受け入れていた。
Aはわしゃわしゃと芥川の頭を撫でる。
「龍」
Aが冷たくなった事よりも、愛称で呼んでくれなかった事が、芥川にとって何よりのショックだった。
芥川は子供のように、Aに甘えた。
暫くそうしていて、不意に芥川が何かに気づいてAから離れる。
「Aちゃぁぁん！！」
叫びながらスパン！と扉を開いた敦は芥川の傍にいる普段のAを見つける。
じわ、と敦の目から涙が溢れた。
「う、Aぢゃぁん…」
こちらも心底安心したらしい。
Aは泣き出した敦を見てぎょっとする。
「ちょ、泣かないでよ」
敦の頭もわしゃわしゃと撫でると、敦はガバッとAに飛びついた。
Aは一瞬びっくりしたものの、受け止める。
「Aぢゃぁん…うぅ…」
「泣かないの男でしょ」
Aは敦の鼻をつまむ。
相変わらず敦は大粒の涙を流しながらAを見つめた。
やれやれ、とAは立ち上がるとティッシュを敦に差し出す。
敦は礼を言いながら受け取った。
Aは腰に手をあててさて、と呟いた。
「遅い夕飯にしようか。」
白衣を脱ぎながら、二人に優しく微笑む。
「手伝って、敦、龍」
二人共嬉しそうに頷いた。
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作者名：Ainyami | 作成日時：2019年8月18日 11時
