冷たい夢主 ページ4
個性というのは、色んな種類がある。
戦闘向き、そうでないもの。
殆どの人が持っている為、その数も膨大である。
敦と龍はこんなものまであるのかと呆然と目の前の人物を見つめた。
「…何見てんの。気持ち悪い」
「ｳﾞｯ」
後半の「気持ち悪い」にショックを受けた敦は呻いた。
Aは個性にかかってしまった。
「エスカレート」という。
その名の通り色んなものをエスカレートさせるらしい。
そしてAはクールな性格が悪い方にエスカレートしてしまったのである。
普段のAなら何見てんの、までは言っただろう。だが気持ち悪いは言わない。
まるで氷のように冷たい性格になってしまった。
「…A」
芥川は恐る恐る、といった感じでAに声をかける。
机に向かっていたAは凍てつくような瞳で芥川を振り返った。
「何、芥川」
たった一言、そう返ってくる。
ぴしりと、音がしたような気がした。
「…？芥川？おい。」
異変に気づいた敦が芥川に声をかける。
芥川はAを見つめて動かない。
「おーい？芥川？」
まるで石になったような芥川に敦は声をかけ続ける。
こっちの声は全く芥川に届いていない。
敦が声をかけ続けるとAが再び振り返る。
「用が無いなら出てってくんない。煩い」
「は、はい！」
冷たい光の灯った瞳で睨まれ、敦は思わず敬語になる。
動かない芥川を引きづり部屋を出た。
勿論、部屋を出る時失礼しましたと言った。
「取り敢えず先生に報告…」
敦はちらりと芥川を盗み見る。
未だに呆然としている芥川は何かにショックを受けているようだった。
「(あの性格になった事が？否、それであそこまでショックを受けることは無いはず)」
敦は自分に考えてみるものの、まるで答えは出てこない。
どこかを見つめて動かない芥川を、敦は初めて、少しだけ心配そうに芥川を見た。
Aは元ポートマフィア、芥川と一緒の仕事場。
どちらかと言うと、敦よりも芥川の方がAと居る時間は長かったのだ。
「(これはきっと、芥川とAちゃんしか知らない事)」
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作者名：Ainyami | 作成日時：2019年8月18日 11時
