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「あ、おいコラ!廊下は走るな!」
小学生の時耳にタコができるほど聞かされた言葉を、高校生にもなって言われるとは思わなかった。心の中で先生に謝りながらも、地を蹴る足は止めない。息は乱れ、運動不足の足は引きちぎれそうだが、それでも走った。走らなければいけなかった。
−−だって。
「バレー部の練習試合終わってしまうーーーーッ!!ヤダヤダヤダヤダ!!」
「ちょ、ちょっと、まってA、きゅうけい」
「えー!?ほら、宮まであともうちょっとだよ!頑張って!」
一緒にバレー部の練習試合を観に行くと約束していた、息も絶え絶えな友人を激励する。彼女は宮侑を推しているらしい。侑くんのためなら……と止まりかけた足を動かし始めた。
予定通りなら試合開始時刻にギリギリ間に合うはずだったのだが、部活がかなり長引いてしまいこんなに走る羽目になっている。コンクールも近いし長引くのはしょうがないのだが、別の日にして欲しかった。ついでに音楽室と体育館をもっと近づけて欲しい。そんなことを今言ってもどうにもならないので、ひたすら走るほかないが。
「ハァ、ハァ、やっと、ゴホッ、着いた……北さん……」
「ほんっまに、A、なんでそんなに、足速いん……?」
体育館の2階ギャラリーにたどり着いた頃には、私たちが試合をしていたのではないかというくらい疲れ果てていた。しかし座っている暇はない。ギャラリーにいる大勢の女の子たちの隙間を縫って、私と友人はなんとかコート全体が見える位置を確保した。
試合は2セット目中盤、稲荷崎が6点もリードしていた。1セット目を先取しているため、このセットを獲れば稲荷崎の勝利となる。
「さて、私の北さんはどこだ?」
私は視線をスコアボードからコートに移した。しかし北さんの姿はない。控えの選手を探したが、丁度ここの真下あたりに居るらしく、確認できなかった。
ローテーションが回ればいずれ北さんも出てくるだろう。そう思って探すのを諦め、コートに目をやった。瞬間、ドンッ!!と体育館に轟音が響き渡り、至るところから黄色い歓声が上がる。
「キャーーーーーッ!!侑くーーん!!」
「治くんナイスキーッ♡」
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作者名:豆腐ハンバーグ | 作成日時:2020年4月11日 0時