【HQ】ごくありふれた、よくある話【北信介】 (ページ8)

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「まあ俺はただの凌ぎ役やから、派手な活躍は期待せんといてや。他の奴らの方がすごいで」

「私の中では北さんが1番です！北さんしか目に入りません！」

「ありがとう。でも侑とかも見たってや、喜ぶと思うで」

「宮を見ている暇があったら北さんを目に焼き付けたいですね」

「相変わらず侑に厳しいなあ」

そんな会話をしていると、いつの間にかバレー部の部室の前まで来ていた。これで今日のハッピーファンミタイムは終了だ。このあと私は、低血圧で機嫌が悪い顧問に徹底的にしごかれる地獄のイベント・朝練が待っている。そしてつまらない授業を淡々とこなした後、放課後再びキツい練習に身を投じなければならない。考えると憂鬱になってくるが、この毎日のファンミのおかげでなんとか乗り越えられそうだ。

「じゃあまたな」

「はい！練習頑張ってくださいね！」

「おん。Aもな」

「ありがとうござ……エッ！？！？」

いま、名前を呼ばれた。しかも呼び捨てで。今まで一度たりとも名前を呼ばれたことなんてなかったのに。
突然のことに混乱しているうちに、北さんの姿は消えていた。私は思わずその場にしゃがみ込んで頭を抱える。

「罪な男オブザイヤー受賞じゃん……」

その日、ずっとニヤけていた私は宮に「気持ち悪い」と500回ほど言われた。