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「こんなとこ溜まっとったら迷惑になるやろ。はよ帰れ」
「スンマセン!帰ります!」
宮の背筋がビシッと伸びる。確かに思わず私も背筋を正してしまうくらいの圧があった。
でも正直、ラッキーな展開すぎてそれどころではない。こんなに近くで北さんを見れるなんて嬉しくて吐きそうだ。正直もう喉元まで来ている。今のうちに沢山顔を見ておこう。
(あー、今日も素敵な無表情!髪さらさら!まつ毛天ぷらにして食べたいな。声までかっこいいって何なんだ?お金をあげたい)
「……あれ、君」
あまりに凝視しすぎて、私の視線に気づいた北さんと目が合ってしまった。慌てて視線を逸らす。一円も払っていないのに北さんと目を合わせることなんてできないし、何より顔が良すぎて脳みそが爆発してしまう。
「あ、北さんコイツです。前言った北さんの頭おかしいファン」
「そうなん?君、よく朝校門で会うよなぁ」
「エッ」
予想外の言葉に脳が停止した。まさか認知されているなんて。
思わず逸らしていた視線を北さんに移す。北さんはいつも通りの無表情で、何を考えているのかわからなかった。
「いつも来るの早いなあ思とったんよ」
「ヒエッ……北さんに会うために早く来てました……」
緊張しすぎて思わず言わなくてもいいことが口から出た。北さんの眠そうな目が少しだけ丸くなる。
「え、ほんま?」
「はい、あ、私4月からここに転入してきたんですけど、部活動紹介のときに北さんのこと見てかっこいいなと思って……そこからずっとファンなんです……北さんの姿をひと目見たくて、バレーしたことないのに女バレの体験入部行ったりもしました……」
我ながら行動が気持ち悪いし、また言わなくてもいいことまで言ってしまった。昔から推しの接触イベントに行くと緊張してやらかしてしまう。これは北さんもドン引きしてしまったかもしれないが、ドン引きした顔も絶対可愛いから見てみたい。というか見せてください。
「そんなに俺のこと応援してくれとるなんて知らんかったわ。ありがとう」
「エッ、え!?あ、こ、こちらこそ生きててくれてありがとうございます!」
予想外の言葉だったためかなり驚いて、本日3度目の余計な言葉を口にした。北さんは引くどころか少し笑みを浮かべている。笑っているところを初めて見た私は感動のあまり泣きそうだった。
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作者名:豆腐ハンバーグ | 作成日時:2020年4月11日 0時