【HQ】ごくありふれた、よくある話【北信介】 (ページ25)

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「－－で、どういうこと？」

放課後、私は部活に行こうとする宮をひっ捕まえて床に正座させた。宮は状況が掴めていないのか、呆けた顔で私を見上げている。

「何のことや。てか何で俺は正座させられてんねん」

「私と宮が付き合ってるって噂について聞いてるの」

「はあ！？何やそれ！」

どうやら本当に知らなかったらしい。宮は怪訝そうに眉をひそめた。面倒だが、全て一から話すしかない。
宮と私が教室で抱き合っているように見られたこと、宮の元カノ(？)の村田さんが、私と宮が付き合っていることを宮本人から聞いたと言っていたこと。一つ一つ説明すると、宮の眉間のシワはどんどん深くなっていった。

「抱き合ってた件はまあしょうがないとして、2つ目は何なの？あんた私と付き合ってるって言ったの？」

「…………言った、かも」

「はあ？」

宮が言うにはこうだ。
村田さんのことは、よく話しかけてくる人くらいの認識しかなくて、そもそも付き合ってなどいなかった。そしてある日、村田さんに告白される。しかし興味がなかったので断ると、どうしても彼女にして欲しいと泣いて縋ってきた。面倒だったので彼女がいると嘘をつくと、彼女の名前を教えろとしつこい。適当にはぐらかしていたが、村田さんに「彼女ってもしかしてAA？部活の後輩が、最近侑とその人が仲良くしとるのよく見るって言っとったんやけど」と言われ、早く解放されたくてつい頷いてしまった。

「……お前が悪いじゃん！」

「なんでや！あの先輩が悪いやろ！」

「彼女は他校だよとか言っとけばいいじゃん、バカなの？そもそも告白されてるんだからもっと真摯な対応をしろよ」

宮は反論できないのか、ぐっと押し黙った。私は一つため息をつく。

「とにかく、早くみんなの誤解解いて。あんただって私と付き合ってると思われるの嫌でしょ？」

「……別に、嫌やない」

「え？」

聞き間違いかと思ったがそうではないらしい。宮はいつになく真剣な顔で私を見つめていた。

「本当に付き合ってみいひん？」

－－これは冗談か、それとも本気なのか。
宮は日常的に私をからかってくるから、冗談の可能性も十分にあり得る。しかし、この真っ直ぐな目が、嘘を言っているようには見えなかった。