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−−もしかしたら、今朝北さんが冷たかった理由もそれかもしれない。
そう考えて自分で笑ってしまった。いくらなんでも都合が良すぎる。期待していると違った時のダメージが大きいから、変に期待するのはやめたほうがいい。そう自分に言い聞かせた。
私は購買でパンを購入して、来た道を戻った。途中、3年生の女子が何名か固まって話しているのが目に入る。こんなところに固まられると迷惑だな、と思いながら見ていると、その中の1人と目が合った。私はすぐに視線を逸らしたが、その人はじっと私のことを見つめたままだ。早くその視線から逃れたくて、私は足早に横を通り過ぎた。
「えー、これが侑の新しい彼女？」
「顔は可愛いけど性格めっちゃ悪いらしいで」
「ほんまに？性格ブスって1番嫌やわー」
すれ違いざまに、わざと聞こえるような声量でそう言われた。先輩とその友人たちはクスクスと笑っている。
−−これには、流石の私もカチンと来てしまった。噂されるだけならまだいいが、私のことを知りもしない人に悪口を言われて黙ってはいられない。私は踵を返すと、先輩たちの元へ歩いていった。
「あの、言いたいことがあるなら直接言ってください」
「は、はあ？」
まさか話しかけてくるとは思っていなかったのか、先輩たちはバツが悪そうに目を逸らす。しかし、先ほど私と目があった先輩だけは、全く怯むことなく私を睨みつけた。
「人のもん横取りしてんじゃねーよ」
「してません」
「したやろ！私が侑に振られたんはアンタのせいなんやからな！」
「何のことか知りませんが、私と宮は付き合ってないですよ」
「ハァ？何で今更嘘つくん？侑から直接聞いたし誤魔化しても無駄ですけど。わざわざ話しに来るとかアンタ相当性格悪いな。とっとと消えろや！」
怒りのピークに達してしまったのか、先輩が手を大きく振り上げた。私は反射的に目を瞑る。痛みを覚悟した瞬間−−優しい柔軟剤の香りが、ふわりと鼻腔をくすぐった。
「村田。進路指導の先生が呼んどったで」
よく知った声にうっすらと目を開ける。すると、目の前に大きな背中があった。少し乱れた白銀の髪がさらさらと揺れている。私は思わず息を呑んだ。
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作者名：豆腐ハンバーグ | 作成日時：2020年4月11日 0時
