【HQ】ごくありふれた、よくある話【北信介】 (ページ21)

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まさかの告白に私は驚いて固まった。男子に直接可愛いと言われることなんてほぼないので、正直ものすごく嬉しい。この場で踊り出しそうなくらいだ。
顔もかっこいいし、付き合ってみるのもいいかもしれない。そう考えた瞬間－－なぜか北さんの顔が浮かんで、胸がぎゅっと苦しくなった。

「ありがとう。気持ちはほんっとうに嬉しいんだけど、鈴木くんとは付き合えない」

気付いたら口が勝手にそう言っていた。鈴木くんはあからさまに肩を落とす。申し訳なくなって謝ると、鈴木くんは困ったように笑った。

「いいんです。Aさんが宮侑と付き合ってるの、知ってましたから」

「……は？」

「でもどうしても気持ちが抑えられなくて伝えちゃいました。オレ最低ですよね。ほんまに自分勝手で－－」

「ちょっと待って。どういうこと？私別に宮と付き合ってないんだけど」

突然の謎発言に脳がついていかない。どうして私と宮が付き合っていることになっているんだ。1人で混乱する私を見て、鈴木くんはきょとんとした顔で首を傾げた。

「え？でも宮侑とAさんが教室で抱き合ってるの見たって、クラスの女子が言うてましたよ」

「ハァ！？そんなことした覚え－－」

ない、と言いかけて、宮が転んだ私を抱きとめてくれたときの光景がフラッシュバックした。確かにあれだけ見れば抱き合っていたと誤解されてもおかしくない。

「それに宮侑もAさんと付き合ってるって言うてたらしいですし……」

「何だそれ！？」

それに関しては全く知らない。宮も何も言ってなかった。
とにかく、宮に会って話を聞くしかない。私は鈴木くんを置いて教室へ走った。

「宮！！」

教室のドアを勢いよく開く。辺りを見回してみたが宮の姿はなかった。近くにいた友人に宮の居場所を知らないか聞いてみると、バレーをしに体育館へ行ったという。流石に体育館まで追いかける気力はないので、私は諦めて購買へ向かった。戻ってきたらとことん問い詰めてやればいいだろう。
私は歩きながら今日あったことを思い出した。考えれば考えるほど全ての辻褄が合ってしまう。朝練で先輩が激昂したのも、今日やたらと視線を感じるのも、全て私が宮と付き合っていると誤解されていたからだ。香澄先輩は宮のことが好きらしいと聞いたことがあるし、人気者の宮に彼女ができたとなればみんな噂するだろう。