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中間テストはいい手応えだった。苦手な数学も、北さんに教えてもらったおかげで、今までで1番いい点数が取れた気がする。もしかしたら学年でも上位の方かもしれない。今から結果が楽しみだ。
テストが終わったので、昨日の放課後から部活が再開された。8月にコンクールを控えた吹奏楽部は、昨日の放課後はもちろん、今日も朝練がある。久々の早起きで眠くてたまらないが、別に苦ではなかった。なぜなら北さんに会えるからだ。テスト前やテスト期間中は、タイミングが合わず1度も会えなかった。今日は実に5日ぶりの北さんである。私は嬉しさに胸を弾ませながら家を出た。
「あっ、北さん!おはようございます!」
見慣れた後ろ姿を見つけ、思わず駆け寄りながら声をかける。久々の北さんに私のテンションはマックスだ。もし私が犬だったら、尻尾を千切れんばかりに振っているだろう。北さんは私をちらりと一瞥してから口を開いた。
「……おはよう」
「今日も美しさが限界値を突破してますね!」
「……」
「あ、そうそう、北さんのおかげで数学めっちゃできたんですよ!」
「それはよかったな」
「……?」
気のせいだろうか。北さんがなんだか冷たい。普段なら笑顔で挨拶を返してくれるのに、今日は目を合わせることすらしてくれなかった。恒例の会話も無視される始末だ。私は少し心配になって、北さんの顔を覗き込んだ。
「北さん、体調悪いですか?」
「別に普通やけど。じゃ、俺は行くわ」
「え」
結局1度も目を合わせることなく、北さんは部室に向かってしまった。私は呆然としてその場に立ち尽くす。
何か嫌われるようなことをしてしまっただろうか。しかし、5日間会っていないのだから心当たりが全くない。
もしかして−−彼女ができたとか?
それならさっきの態度も頷ける。彼女がいるのなら、他の女と2人きりで話すのは避けたいだろう。特に、毎日好意を伝えていた女なら尚更だ。
「彼女、か……」
推しが幸せになるのはいいことだ。北さんが幸せなら私も嬉しい。−−嬉しい、はずなのに。
じくじくと痛む心臓を、制服の上からぎゅっと押さえつける。心が苦しくて破裂しそうだった。
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作者名:豆腐ハンバーグ | 作成日時:2020年4月11日 0時