スローモーション6・・kei.i・・

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増「いっ…た、」



.



強い力に引っ張られて、気が付いたら増田くんの腕の中、歩道に引き戻されて倒れ込んでいた。車のエンジン音が遠ざかっていく。





増田くんが、私の体に回した腕を離して体を起こした。





増「何やってんだよ…！」



彼の言葉に応える余裕もなく、もう一度車道の方に視線を向ける。






どこ？
どこにいっちゃったの？





心臓がドクンドクンと波打って、うまく呼吸もできない。





増「これでしょ…？」



増田くんがそう言って、手に持っていたそれを、私の手のひらに置いた。





A「………！」





手にした瞬間、身体中の力が抜けていって、思わずそれをぎゅっと、握りしめた。






A「よか…った、」






千切れたチェーンの先に、きらりと確かに光っていた赤いハート。

あの夏の日に、慧くんと交わした約束。






増「だからって…飛び出すことないじゃん…！何考えて、」




A「ないの…、」



増「え…？」




ネックレスを握りしめたまま、気が付いたらぽろり、ぽろりと涙が溢れ出していた。






A「一緒に撮った写真も、1枚もないし…」




.




『A、おいで』


私を呼ぶ大好きな笑顔が胸に過ぎった。



.






A「2人で一緒にいた思い出、もうこれしか、残ってないの…！」









ぽろり、もう一粒涙が地面に落ちた瞬間、









増田くんのあったかい腕が、私を抱き締めた。

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