スローモーション6・・kei.i・・

248 kei ページ28

いつもの場所に1人、ぺたりと座る。
1人だけの屋上は、なんだかとても、広く感じる。






大丈夫、Aの周りには、優しい人がたくさんいるから。




Aはさ、俺のことなんか忘れて、
いつも側にいてくれる人と一緒にいた方が、きっと幸せだから。




そう自分に言い聞かせて、受け取った写真に手を掛ける。






僕が君のためにできる最後のこと。



これさえなくなればもう、
僕と君が一緒にいた証はなくなる。




.




慧「っ……、」







だけど写真の中の笑顔を見た瞬間、破ろうとしたその手は止まって、


視界がぐにゃりと歪んで、ぽたり、と雫が落ちた。




.





『慧くん、』




.




思い出すのは、



僕の名前を呼ぶ君の、楽しそうな声。




.





慧「できねぇよ……、」








ぽたり、ぽたり、


降り出した雨みたいに、


写真の上に落ちていく雫。




.





ねぇ、せめて、


写真の中でだけは、一緒にいることを


許してくれますか？



.







高校2年生の冬の終わり。






静かに始まった君との恋は、







静かに、静かに終わりを告げた。

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