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A「…あれ?」
.
雨が降り止まないまま着いた学校。
傘を畳んで、吹き込んだ雫で濡れたカバンの表面をハンカチで拭いて。
2月の終わりにしては久しぶりに、なんとなくじめじめしたあったかい空気の朝。
季節の変わり目を感じながら、下駄箱を開けて思わず声が出た。
今日は、入ってない。
あれだけ毎日続いていた嫌がらせ。
とうとう飽きたのかな。
いや違う、手法を変えたのかも。
警戒しながら上履きの中も注意深く調べてみる。
…やっぱり特に何もない。
構えていた分、拍子抜け。
上履きをぱたぱた鳴らしながら、教室に向かう。
.
教室に入った途端、心臓がぴくんと跳ねた。
唯香「Aおはよ、」
A「あ…おはよう」
唯香「ねー、今日の放課後暇?買い物付き合ってほしいんだけど、」
A「…………。」
後ろから2番目の席に突っ伏して眠っている、あの日以来の彼の姿が目に飛び込んできたから。
今日は、来てる……!
唯香「A、おーい、」
A「あ…、うん、おはよ」
唯香「それさっき言ったってば、もう」
唯香が肩を揺らしてくすくす笑った。
.
久しぶりに会えたことが、こんな時なのにやっぱり嬉しい。
彼の黒髪の、襟足の先が少し跳ねていた。
ふふ、慧くん、寝癖ついてるよ。
昨日はお仕事、遅かったの?
電車の中でもずっと、寝てたんでしょ。
その襟足に、背中に、話しかけたいのを、触れたいのを、我慢して席に着く。
ねぇ今日のお昼休みは、いつもみたいに会ってくれる?
そんなの我儘だってわかってるのに、会えるかなって心の奥で、期待している自分がいるんだ。
…我儘だよね。
同じ教室の中、
いちばん近くて、いちばん遠い時間。
.
.
キーンコーン……
遠くに予鈴の音がして、窓の外を見た。
雨は時間を追うごとに強まって、窓に叩きつけるように降り続いている。
あの日みたいだなぁ。
慧くんちに行った、夏休みのあの日。
なんだかすごく遠い昔の出来事みたい。
ブランケットを畳んでソファから立ち上がる。
もうすぐ5限目が始まる。
…行かなくちゃ。
.
その日、お昼休みの資料室に、慧くんは来なかった。
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ゆい(プロフ) - 通知が来て、久しぶりに読み返しました。lastがとてもきになります。どうか公開またはパスワードを教えていただけないでしょうか?? (2019年1月18日 22時) (レス) id: bc8f1d224d (このIDを非表示/違反報告)
ルナ#(プロフ) - last読みたいです。パスワード教えてください。お願いします。 (2017年3月26日 16時) (レス) id: 010ac9b730 (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 最終回だけパスワードかかってるんですか?あとで外れるんですか? (2017年3月26日 15時) (レス) id: 20501953db (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - スローモーションのlastのパスワードを教えてください!!お願いします!! (2017年3月26日 15時) (レス) id: ef8cab0c4e (このIDを非表示/違反報告)
志田梨奈(プロフ) - この作品のラストですが、パスワードを教えて頂きたいです。よろしくお願いします (2017年3月26日 15時) (レス) id: ff46e8fc7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2017年2月5日 18時