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月の綺麗な夜だった。
秋の始まりの気配が漂う澄んだ夜空に、ぽっかりと浮かんだ月。やわらかい光が、波の上をゆらゆらと揺れている。
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涼介は私の手を掴んだまま何も言わずにぐいぐいと進んでいき、いつもの海辺までやって来ると防波堤のコンクリートに腰を下ろした。何が何だか分からないけれど、とりあえず隣に座る。
はぁ、と大きくため息をついた彼は、くるりとこちらを向いて言った。
涼介「何が何だか分かんねーんだけど。ちゃんと説明して?」
A「え?私も何が何だか分かんない…」
涼介「ハァ?分かんねーのかよ」
A「涼介なんでうちにいるの?」
涼介「いちゃ悪いかよ」
A「違う…!会えて、嬉しい…」
涼介「…!」
一瞬きょと、と目を見開いた涼介は、あーもう!と自分の髪の毛をくしゃくしゃやって、それからはぁってため息をついて俯いた。
涼介「…会いたかったよ。俺も」
A「…!!」
本当に何が起こっているのだ?
小さく掠れた涼介の声は、今まで聴いたことのない種類の甘さを含んで、ゆったりと私の耳に響いてきた。とくとく、急に鼓動が速くなる。
A「私ずっと…謝りたかった…涼介に」
涼介「謝る?何を?」
A「だって…!ひどいこと言っちゃったもん…」
涼介「なんか言ったっけ?」
A「へぇっ?言ったよ!花火大会の時!」
涼介「あー、んなこと…お前普段からだいたいあんなこと俺に言ってたじゃん」
A「え?言ってた?私ってひどい…ごめんね」
涼介「何を今さら」
あれ、笑ってる。
私何か面白いこと言ったかな?分からない。でも久しぶりに見た涼介の笑顔にほっとしている自分がいた。
A「謝りに行きたくてカフェ行ったけど無視されたから怒ってんだと思ってた」
涼介「あれは…!Aが急に来るからだろ、あの時忙しかったし…あとで声かけようと思ってたら、お前ソッコーで帰るし」
A「そうだったの…?でも引っ越したのも教えてくれなかったし」
涼介「それは…ごめん。お前と少し距離を置きたかった」
A「ほら!やっぱり怒ってるじゃん…!」
涼介「そーじゃねぇって!あーもう泣くな」
再び私の目からぽろぽろ溢れ出した涙を涼介の指が慌てて拭う。バッグからハンカチを出してごしごし擦った。メイクなんてとっくの昔に全落ちしているけどもう気にしない。
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レイン(プロフ) - この作品を見てて私も青色担ですが、オチは一途な涼介くんでいてほしいなと思ってたらラスト最高でした!とてもきゅんきゅんして素敵な作品です!これからも応援しています😆 (2021年11月6日 16時) (レス) @page49 id: ca602b2456 (このIDを非表示/違反報告)
ゆさ(プロフ) - 完結おめでとうございます!今回も最高のちゃみきゅんごちそうさまでした♡涼介も慧くんも好きすぎて揺さぶられまくっちゃいました(笑) 登場人物みんな好きにさせちゃうプロですやん、、これからも応援してます!♡ (2021年10月13日 17時) (レス) id: 79c677a56e (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - 完結おめでとうございます(о´∀`о)今回も楽しませていただきました!!ありがとうございました!! (2021年10月13日 11時) (レス) @page49 id: 7a2928f008 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぺロン(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品もドキドキ&キュンキュン楽しませもらいました♪ちゃみさんの作品でオチが山田くんなのが意外でしたが、山田くん素敵でした(*^^*)知念くんファンの私も持っていかれそうでした(笑)今後もちゃみさんの執筆活動を応援し続けます(^^) (2021年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 34cb35f605 (このIDを非表示/違反報告)
めい子(プロフ) - 完結おめでとうございます❤キラキラ伊野尾くん、無愛想だけどなんだかんだ優しいツンデレりょうすけ、ふわふわ主人公ちゃんにキュンキュンさせていただきました♪りょうすけの思いが実って嬉しいです〜(;_;)約一年半、お疲れ様でした(*´ω`*) (2021年10月10日 23時) (レス) id: ff5cae632c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年8月11日 9時