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「お待ちください野呂様、その子は本当に今しがた入ったばかりでまだ何も、」
「うるさい!お前はいつからそんなに偉くなったんだ?この店で1番の大口の客は誰だ?」
「野呂様でございます…」
彼女がそう答えると、男は満足そうにニヤリと笑って、私の手首をぐい、と掴んだ。
「分かってるじゃねえか。俺はな、お前みたいな派手な女には飽き飽きしてたんだ。たまにはこういう素朴なのをいただかないとな」
まさかの展開に、身体中からすーっと血の気が引いていく。
男はぐいぐいと強引に私の手を掴んで、廊下を奥へ奥へ進んでいく。
さすがに止めてくれるだろうと振り返ったけれど、
「ごゆっくりお楽しみくださいませ…」
女はこちらにうやうやしく頭を下げるだけだった。
.
「おいお前、もう少しこっちへ来い」
ゆらりと行灯の光が揺らめく座敷の部屋の真ん中に、布団が一組置いてある。
男はさっきからそこにどん、と座り込んでお酒を飲んでいた。
こういうことにいずれはなると分かって来たのに、まさか今夜、だなんて。
心も体も何の準備もできておらず、ただ頭が真っ白になっていた。
「なんだよお前、愛想がないな」
A「すみません…、」
振り絞る声はすっかり震えて、涙も出ない。
「緊張してるのか?可愛いじゃねぇか…」
じわりじわりと男がこちらに近付いてくる。
あーぁ、私の大切なものは、こんなところでこんな形であっさり奪われてしまうのか。
全てはお金のため、生活のため、もう一度、涼介さんに会いに行くため…
うっかり心の中でそう言い聞かせてしまった瞬間、頬をすっと一筋の雫が流れ落ちた。
A「涼介さん…」
「なんだ?何か言ったか?」
男の手が着物の襟元に掛かりそうになった、その時だった。
.
ばん!といささか乱暴に開けられた障子戸。
「なんだテメェは!」
男が睨みきかせたその先を振り返り、私の呼吸ははっと止まった。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時