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「働かせてくれって…そんなこと急に言われてもねぇ」
A「お願いします…!皿洗いでも掃除でも、なんでもやります…!」
うなじを見せつけるように襟元を着崩して、派手な化粧をした女の人が、私を上から下までじろりと見た。
「ふぅん…まぁ、痩せっぽちだけど器量は悪くないね…ちゃんとした格好すればそこそこ使えるかしら」
予想の通り、あっという間に日々の生活は行き詰まった。
昼間の仕事だけでは、母の薬代や毎日の生活費を賄うのが精一杯で、お店を開くなんてとんでもなかった。
でも、お菓子を作らなくちゃ。
そうじゃなきゃ、涼介さんにだって会えない。
思い詰めた私は今夜、ついにこのお店の門を叩いていた。
屋台街の入り口にある一際目立つその建物の前には、いつだって派手に着飾った女の人がねっとりとした視線を道行く人に向けていた。
お酒をついで接待するだけ、っていうのは表向きで、
酒代に少し上乗せすればそれ以上のこともできるようなお店。
遊郭というほどの品はなく、ぼったくりのようなことをしているという噂もあって、決して評判が良いお店ではないのはよく知っていた。
でも仕方ないんだ。手っ取り早く稼ぐには、やっぱり昼間の仕事だけじゃだめ。もう売れるものは売り尽くしてしまった。残っているのは私の身一つ…
「ついてきな。まずは見習いからだよ」
A「ありがとうございます…!」
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廊下を歩いていると、前から上等な着物を着た大柄の男が歩いて来た。
「野呂様!いらしていたのですね」
「おう、お前か」
途端に猫撫で声になる彼女。野呂と呼ばれたその大男はどうやら常連客らしい。一応頭を下げておく。
「お久しぶりで嬉しいわ。すぐ向かいますから、いつものお部屋で待っていてくださいな」
「おい。後ろのお前、見ねえ顔だな」
A「あ…私は、」
「あぁ、こっちの小汚いのは今夜入ったばかりの見習いですよ。しっかり鍛えて綺麗にしたら客の前に出してやりますから」
「顔をこっちに見せろ、お前」
近付いてきた男が私の顎に手を掛けてくい、と上向きにさせた。途端酒臭い息が顔にかかり、思わず眉をひそめる。
「いいじゃねぇか。おい、今夜はこいつにするぞ」
A「え…!」
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時