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ふと目を覚ます。
背後からすっぽりとあたたかい腕に抱きしめられる形。
慧ってこうやって寝るのが本当に好きだよなぁ。
くたくたになってしまったはずなのに、妙に頭がすっきりと冴えてしまった。
目を開けると、先程まで暗闇だったはずの外が薄明るい。
もう夜明け?
そっと布団から出て、縁側に続く障子戸を開けた。
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A「わぁ…!」
目に飛び込んできたのは、山の向こうから顔を出した大きな満月だった。
煌々とした明かりに思わず見惚れて、縁側に腰を下ろした。
慧「…大満月だね」
ふと後ろで声がする。
振り返るより先に、慧は後ろに腰掛けて、私のお腹の辺りにくるりと腕を回した。
A「そっか…!」
思わず感慨深い気持ちになって、空を見上げた。
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大満月の夜は、私たちにとっては特別な夜だ。
あの月の光を見ていると、いろんなことを思い出す。
妖狐だった頃の彼と過ごした内緒の時間のこと、
一度はお別れをしなければならなかったあの悲しい夜のこと、
彼の人間としての時間が始まった夜明けのこと…
慧「今年も一緒に観られたね」
A「うん」
後ろから伝わってくる声は穏やかで、今流れている平和な時間を象徴しているよう。
これが当たり前のことではないということを、胸が締め付けられるような切実さと共に改めて感じる夜。
その時慧が、「あ、」と何かを思い出したように立ち上がった。
A「どうしたの?」
慧「忘れてた。Aに手紙が来てたんだよ。確かそこに仕舞ったような…」
茶箪笥の引き出しに手を伸ばした彼は、達筆に宛名が記された手紙をはい、と渡してきた。
A「誰から?」
慧「書いてないけど、たぶん…」
A「あ…!」
心当たりをぴん!と思い出して、そっと手紙を開いた。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時