epilogue--はな壱もんめ--(12/30) ページ24
「慧せんせ!ようかいきつねって知ってる?」
慧「ふぇっ?」
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隣の部屋から聞こえてきた無邪気な声に、思わず針を動かしていた手を止め聞き耳を立てた。
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慧「びっくりしたぁ、急にどうしたの?」
「妖怪狐が出たんだって!父ちゃんが話してるの聞いたんだ!あの山を越えてずっとずーっと行った所の街の話だって」
「何それ怖い話…?やめてよぉ裕翔…」
「怖い話じゃないよ!妖怪狐は優しいんだ」
裕翔くんは得意気にそう言って、妖怪狐の話を始めた。
山の向こう、そのまた向こうにある小さな街で火事があった。
建物の中には取り残された人がいて、誰も助けにいけずに絶望したが、
どこからともなく現れた妖怪狐がその人達を助け出し、
さらに妖力を使って雨を降らせ、その火事を鎮めた…
.
慧「だいたい合ってんな…」
「え?何?慧先生も知ってるの!?」
「すげぇ!やっぱり本当なんだ!」
少年たちの声色が、にわかに弾み出す。
あーもう、そうじゃなくて、と慧があたふたする声が聞こえてきて、思わず笑ってしまった。
慧「ったくもう、二人ともおしゃべりし過ぎ!ほら圭人、全然終わってないじゃん!裕翔も!」
「はぁい」
素直な少年たちは途端に静かになった。
時折、先生ここは?と、慧に質問をしている声がぽそぽそと聞こえてくる。
あの子たち、ちょっとやんちゃなところもあるけど、根はとっても真面目なんだよね。そろそろおやつの準備をしてあげようかな。
仕立て途中だった着物を丁寧に畳んで、土間に降りた。
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「やった!お団子!」
A「ちゃんと手を洗ってからね」
嬉しそうに飛び跳ねて手を洗いに行く二人に思わず頬がゆるませながら、淹れたばかりの熱いお茶を慧の前に置いた。
A「ご苦労様」
慧「うん、ありがと」
ふわりとした笑みが返ってきた。もう何度もそれを見ているはずなのに、胸の奥にきゅんと響く甘い鼓動の音は、心地良い。
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A「おいしい?」
「うん!」
慧「ゆっくり食べな。ほら、こぼれる」
ニコニコとお団子を頬張る二人。
年端は10もいかないはずなのに、そうとは思えないくらい手元が荒れているのは、日々家の仕事を手伝わされているから…
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時