はな壱もんめLast・・Kei.Ryosuke・・

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とくとく とくとく

静かに、でも確かに聴こえてくる希望の音



慧「A…ここは天国…？」



熱くなった目元。
視界が揺らめいて、こみ上げてくる想いに息もできない。

うまく言葉にできず、彼の体を抱きしめたまま首を横に振る。



慧「じゃぁまだ俺の夢の中…？」



また首を横に振る。

ゆっくりと体を離した彼が、こちらを覗き込むようにして言った。



慧「夢を見てたんだ…子どもの頃の夢。Aも出てきた」


A「うん」


慧「子狐が俺の体から飛び出して、母ちゃんたちの所に行ったんだ」


A「…うん」


慧「ねぇ、ひょっとして、俺は…、」


A「ごめんなさい…！」




堪らず頭を下げた。
彼の瞳がきょとん、とこちらを見つめている。




A「あなたの狐としての命はもうない。私は神様と取り引きをしたの。


慧、あなたを甦らせるために…！」




やがてそれはみるみるうちに開かれ、こくりと喉を鳴らした彼は、

戸惑ったような顔をして、再び私を抱きしめた。




慧「それって、つまり…」



A「そうだよ…





慧は人間になったの…！」





刹那、彼の体が僅かに震えた。





慧「本当に…？」


A「うん、本当に…、


貴方はこれから、人間として生きていくの。


勝手なことをして、ごめんなさい…！」





彼はふぅ、と息を吐き、やがて小さな声が耳元で響いてきた。



.





慧「勝手なもんか…！



震えてるの。分かる？



嬉し過ぎて…




こんなに幸せなことってないよ…」



少し掠れた言葉尻は、涙で滲んでいるようだった。

抱きしめられた腕から、くっついた体から、伝わってくる彼の温度と熱い想い。


堪らず私の頬からも、涙がぽろぽろと零れ落ちた。

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