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A「そうだよ!約束したじゃない!満月の夜には必ず迎えに来てくれるって!」
そう言った途端、彼は目を見開いて、
はっと何かに気がついた瞬間、私の体をぎゅ、と抱いた。
慧「そうだった…そうだったね…
ごめんA。ありがとう。
思い出した」
何度も噛み締めるようにそう言うと、彼は私の手を握ったまま静かに振り返った。
慧「父ちゃん!母ちゃん!みんな!
ごめん…俺やっぱりまだそっちには行けない。
Aと一緒に生きていきたいんだ」
A「あ…!」
その時、慧の胸元から小さな白い影が飛び出した。
その影は、いつの間にか真っ白な子狐に姿を変え、
立ち止まってこちらを振り返った。
慧「…君は、行くんだね」
しばらく澄んだ瞳でこちらを見ていた子狐は、やがて前を向き、集落に向かって駆け出した。
その時、
集落の入り口にいた人影がこちらに向かって大きくゆっくりと手を振った。
皆、穏やかににこにこと笑って。
やがてそこに辿り着いた子狐は、慧によく似た女の人の胸元に飛び込み、
彼女はそれを愛おしそうに抱きしめた。
慧「ありがとう。そこからずっと、見守っていてね」
夕焼けの橙に包まれたその世界の全てが、泣きたいくらいに綺麗で、優しかった。
誰かが誰かを想う気持ちのいちばん綺麗なところを、はっきりとこの目で見た気がした。
慧「行こう」
慧は私の手を取り清々しく笑って、
集落とかつての仲間たちに背を向け、駆け出した…
.
.
.
A…、
…A、A
慧「A!」
A「!」
名前を呼ばれ、はたと目覚める。
ひんやりとした床板の感触に懐かしさを覚えた。ここはきっと、いつもの神社の本殿だ。
瞬きをする。
ぼやけた視界から、少しずつ焦点を合わせていく。
A「慧…!」
こちらを覗き込んでいたその瞳が見慣れた大好きなものだったと気付いた瞬間に、
彼は私の体を引き寄せて抱き締めた。
とくとくと、確かに伝わってくる慧の鼓動と温もりに、
耐え切れず一粒、こぼれ落ちた涙が彼の肩に落ちた。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時