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勝って嬉しい花いちもんめ
負けて悔しい花いちもんめ
あの子が欲しい
あの子じゃわからん
相談しましょ
そうしましょ
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懐かしい旋律が聞こえて、ふと気がつくとそこは、宵闇の迫る神社の境内だった。
目の前には、あの頃一緒に遊んでいた懐かしい顔触れ
そして隣で私の手を握っているのは、あの頃と同じあどけない顔をした慧だった。
思わず自分の姿を見下ろす。
どうやら私も子どもの姿らしい。
この着物はその頃よく着ていたもの。紫陽花の刺繍が可愛らしくて大のお気に入りだった。
驚いて何か言おうとした次の瞬間に、友達が空を見上げ言った。
「あ!もう帰る時間だ!」
「ほんとだ!また明日ね!」
A「あ…!」
皆も慧も、にこにこと手を振って、その場からぱっと散り散りになって駆け出した。
A「待って…!」
細い山道の方に去っていく慧の背中を、慌てて追いかけた。
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まるで飛んでいくような速さで、慧の背中はどんどん遠ざかる。
A「慧、待って!」
待って、待って、
そっちへ行っては駄目
そうしたらもう二度と会えない
彼の背中を必死で追いかけながら、そんな焦りにも似た感情が次々と湧き上がる。
どうしてだかわからないけど、そっちに行ってしまったらもう慧には二度と会えないという確信があった。気が付けば涙がじわりと滲んでくる。
A「行かないで…!お願い」
息も絶え絶えになって、必死で絞り出した言葉は届かない。
力尽きて立ち止まって、呼吸を整えて、
深く息を吸い込んだ私は、精一杯の大声で彼の名前を呼んだ。
A「慧!!!」
慧「!」
ぴたりと止まった足。
彼が少し離れた場所から、ゆっくりとこちらを振り返った。
慧「A?どうしたの?」
A「慧、行かないで!そっちに行っちゃ駄目なの!」
言いながら一歩、また一歩彼に歩み寄っていく。
慧「どうして?もう帰らなくちゃ日が暮れちゃうよ」
A「駄目だよ…そっちに行ったら、もう、会えないんだよ…」
言いながら鼻の奥がつんと痛んで、ぽろぽろと涙が頬を滑っていった。
それを見た慧は、一瞬ハッと目を見開いて、小走りでこちらにやって来た。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時