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神社の言い伝えを思い出し、反射的に声を上げた。
A「神様ですか!?」
___さぁ。どうだろうね
A「っ…、彼を…慧を助けてください…!」
___そいつ、人間じゃないね。
A「…!」
黄金色に包まれていた空間が、その瞬間真っ暗になった。
驚いて思わず、慧の体をぎゅうっと抱き締めた。
___狐なんて珍しい。まだ生き残ってたのか。
A「命を助けてくださいますか?!」
___あんたの望みはよくわかった。そんなのお安い御用だよ
A「本当に…!?良かった…」
___ただし、タダで助けてはあげられないよ。分かっているだろう?
A「え…?」
男にも女にも聞こえる、不思議な声だった。
その声の主は、心から可笑しそうに声を上げて笑った。
___あんた、何も知らないできたのかい?
私はタダで命を蘇らせたりはしない。
こっちだってそれなりに労力を使うからね。
対価は支払ってもらうよ
A「対価、って…?」
___簡単さ
にわかに走った緊張感に、思わずこくりと喉が鳴る。
___誰かを生き返らせる代わりに、誰かの命をもらう。それが自然の摂理ってもんだ。
A「…!」
___生贄が必要だって言ってるんだよ、お嬢ちゃん
突然つきつけられた事実に、ほんの一瞬、目の前が真っ暗になった。
___特にあんたみたいな、若い女の命なんて大好物…
急に低くなった声色に背筋が凍る。
指先が恐怖で小さく震えだした。
その時、抱き抱えていた慧の体の手元が、とさりと地面に落ちる気配がした。
はっとしてその手を握る。
もう冷たく動かなくなってしまったその手。
A「……。」
かつてはあたたかかったこの手に、私は何度も救われた。
もう十分なくらいの幸せをもらった。
.
A「…構いません」
___………。
躊躇したのはほんの一瞬で、
気が付けばすらすらと言葉が溢れてくる。
A「…短い間だったけど、私はもう十分過ぎるくらい幸せに生きました。もう何もいらない。
慧はずっと一人で生きてきたの。だから、これからずっと幸せに穏やかに生きてほしい」
いつのまにか手の震えはぴたりと止まった。
不思議と心が凪いできた。
この人のためなら構わないと、本当に心の底からそう思えたのだ。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時