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涼介「もういっぺんこいつらに触れてみろ…いくらでも斬ってやる」
ぞっとするほど低いその声に、騒めいた群衆が後退りしていく。
涼介は、刀を群衆に向けたまま、倒れている男の腕から慧の体をそっと抱き上げ、まるで赤子を扱うかのように、私の腕に戻した。
涼介「A、落ち着いてよく聞いて」
耳元で小さく聞こえるその声の甘い響きを、こんな時なのに噛み締めた。
涼介「空を見て。今夜は大満月だ」
A「…!」
思わずはっとして空を見上げた。
このところ屋敷に閉じこもってばかりで、今がどの季節かもいまいち分かっていなかった。
もうあの狐祭りから1年が経っていたなんて。
涼介「言い伝えが本当なら、こいつを生き返らせることができるかもしれない。やってみる価値はある」
A「でも、一体どうすれば…」
.
『化け物だ』
『殺せ』
.
いつしか手にそれぞれ武器のようなものを手にした群衆が、ぬらりと近付いてくる気配がする。
恐怖に駆られた群衆の心は、少しのことでは止まらない。
本当の化け物は人の心の中にいるのだと、その時悟った。
涼介「神社の本殿の中に、丸い鏡があったのを覚えてる?」
A「確か…小さな棚の上に…!」
涼介「あれを月明かりに照らすんだ、それだけでいい」
そうこうしている間にも、群衆達はじわりじわりと近付いてくる。
涼介「行って、早く、」
A「でも…」
涼介「ここは俺がなんとかする。もうすぐ夜が明けるから、その前に…!」
その時、群衆の真ん中にいた男が、
手斧のような物を持ち、こちらに向かって駆け出すのが見えた。
A「…!」
涼介「走れ!」
ほとんど同時に、涼介の澄んだ声が夜空に響いた。
A「っ、」
群衆の足音とぶつかり合う金属音が耳に響く中、彼に背を向け夢中で駆け出した。
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いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして!執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした!号泣しながら何度も読み返しました…!やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました!本当にお疲れ様でした! (2020年12月31日 21時) (レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます!もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです!気長に待ってます^^これからも頑張ってください!応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も!いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです!トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…!!!喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました!w「はな壱もんめ」大大大好きです!これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年9月18日 16時