＊ ページ11
A「そんなこと言わないで…、
慧がいない世界なんて、生きてても意味ない…！
それなら私も…
私も一緒に連れて行って…！」
閉じられかけていた瞳をほんの一瞬だけ丸くして、
彼はいつもみたいに優しく笑った。
慧「…駄目だよ」
A「っ、」
慧「Aは、もうすぐあの男と結ばれて…
きっとかわいい赤ん坊が生まれてさ、
家族に囲まれて、おばぁちゃんになるまで幸せに生きてくんだ…」
目を閉じながら紡ぐその声は、もうほとんどうわ言のようで、
分かりたくないのに分かってしまう。
慧とのお別れが、もうすぐそこまで迫っていること。
A「慧…、」
世界がゆらゆらと揺れる。
嫌だ、少しも見逃したくない。
手の甲で何度も涙を拭う。
その時、最後の力を振り絞るように、
彼の白い綺麗な手が伸びてきて、私の頬に優しく触れた。
慧「泣かないで…？」
A「…っ、だって」
慧「…笑ってよ」
それはきっと、彼が私に言った、最初で最後の我儘
頬に当てられた手の甲に、そっと自分の手のひらを重ねる。
まだこんなに温かいのに。
涙でぐちゃぐちゃになった顔のまま、無理矢理口角を上げた。
慧は、そんな私の顔を見て、
いくらか安心したように微笑んだ。
慧「ふふ…ありがとう…
君に会えて、幸せだった…」
A「私もだよ…、」
待って、まだ話したいことがたくさんあったのに。
置いていかないで、お願い。
あと少しで喉元から出てきそうな言葉たちを必死で飲み込むと、
閉じかけていた瞳が、再び僅かに開いた。
慧「またね」
最期に貴方はそう言って、
見たことないくらい悲しい目をして笑った________
.
A「慧…、」
ぽたぽたと彼の頬に流れていくのは涙か雨か
A「いやだ…！」
閉じられたその瞳はもう二度と開かない。
.
はらはらと降りしきる雨の中
いつのまにか彼の体は消えて、
気が付くと腕の中で、傷付いた小さな白い狐が、息絶えていた…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1265人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いのてりーなみよ(プロフ) - 初めまして！執筆お疲れ様でした。ちゃみさんの作品が大好きで、小学生の頃から読んでいます。今回のお話も曲の世界観とぴったりで最高でした！号泣しながら何度も読み返しました…！やっと自分の携帯を手に入れ、やっとコメントができました！本当にお疲れ様でした！ (2020年12月31日 21時) (
レス) id: 7e384a3a2f (このIDを非表示/違反報告)
* Rin*(プロフ) - 完結おめでとうございます！もうずっと涼介は…涼介はどうなったんだ…!?と気になっていたのでスピンオフ、めっちゃ嬉しいです！気長に待ってます^^これからも頑張ってください！応援してます (2020年12月31日 17時) (レス) id: 9f5e8f6a71 (このIDを非表示/違反報告)
ふくなな(プロフ) - 初めまして、こんばんは。完結お疲れさまでした。以前からちゃみさんの書く慧くんがどのお話も大好きで、今回のお話も！いつも温かい気持ちになります。ありがとうございます。 (2020年12月31日 0時) (レス) id: 4cd974fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - 完結おめでとうございます！そしてお疲れ様でした！この小説を読んでから歌を聞くと少し切ない気持ちになりました笑この作品大好きです！トキメキをありがとうございました、 (2020年12月30日 15時) (レス) id: f21f825d8b (このIDを非表示/違反報告)
* . ° いのくま。* .(プロフ) - 完結おめでとうございます…！！！喜びと終わっちゃう悲しみできゅんと切なくなったり…。でも山田さんのスピンオフ作品で気分がぐわっと上がりました！w「はな壱もんめ」大大大好きです！これからもずっと読み返したいです…。なによりちゃみさまお疲れ様でした！！ (2020年12月30日 14時) (レス) id: 8f7fc3c7dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃみ
| 作成日時：2020年9月18日 16時
