はな壱もんめ3・・Kei.Ryosuke・・

堕ちていく ページ1

A「もう会えないかと思った」



空に浮かぶ満月を見上げながら、繋いだ手に指を絡め直す。
隣でゆったりと歩いていた彼が笑いながらこちらを見た。



慧「そんなの、こっちが死んじゃうよ」

A「ほんとだよ、私だって死にそうだった！」


片頰を膨らました私を見て、また彼が笑った。
冗談みたいに言ったけど、半分は本当。


今夜こそ、今夜こそは来てくれるはずだと言い聞かせ、最後の方はよく眠れない日が続いた。


浅い眠りから目覚めた時、辺りが朝の光に包まれていたのを、
あれほどまでに落胆したことはきっとこれまでで初めてだ。



慧「ごめんね。何回か行こうとしたんだけど、やっぱり満月の夜が1番安全みたいだから」


A「そっか…」



ひと月振りに会う慧は、相変わらずのんびりと笑っていたけれど、
よく考えてみれば彼だって、私に会うために相当な危険を冒して、今ここでこうしている。


そう思ったら急に、いろいろな思いが込み上げてくる。



慧「んー？」



歩きながら、寄り添うようにその腕を抱き締めた。見上げれば、優しく垂れたその瞳がきらきらと私を見下ろしてくる。



A「ううん、なんでもない。ねぇ、もうすぐ着くかな？」


慧「お、道覚えてたね。当たり」



彼の足が見慣れた街並みの路地を曲がる。
人気の少ない通りの向こうに、煌々と灯りがついている広場が見えてきた。




この前初めて2人で夜空を散歩した時に見えた、夜の屋台街。

近付くに連れ聞こえてきた、人々の賑やかな騒めきに、思わず心が弾む。

身を隠すように羽織っていた、古ぼけた亜麻色の布を肩に掛け直した。




慧「俺にくっついててね。絶対に離れちゃだめだよ」

A「？わかった」




広場に一歩踏み入れ、私は彼の言葉の意味をやっと理解した。

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