業 ページ29
侑李「背中の打ち身の症状はだいぶ良くなってます。貼り薬を置いていくから毎日張り替えて。食事が採れないのは…」
再び眠ってしまったAの布団のすぐ横で、
教育係の女中が心配そうな顔をして彼…俺の友人であり彼女の担当医である彼、の話を聞いている。
侑李「精神的な影響が大きいかな、と」
幾松「そうですか…」
涼介「……、」
ため息をついてAの寝顔に視線を向ける。すっかりやつれてしまったように思う。
侑李「じゃ、僕はこれで」
幾松「お送り致します」
部屋を出ていく直前、知念がちらりとこちらを向いたので、片手をあげて挨拶の代わりにした。
.
あの出来事から1週間経った。
幸い騒動の顛末は屋敷の中に広まってはいない。事実を知っているのはあの教育係だけだった。
あれ以来Aはすっかり寝込んでしまい、食事も満足に取れない日々が続いている。
心配で毎日のように通っているけれど、たまにふと目を覚ましてもさめざめと泣いてばかりいて、ほとんど会話もままならない。
涼介「A」
どうしてそんなことできるのよ、と、
あの日のAの声は耳の奥にずっと残ったままだ。
分かってくれなくてもいい、何を言われたっていい
ただ君を守りたかった
言葉にならない思いが少しでも伝わればと、彼女の頰に触れた。
もう一つ、あの夜から心にずっと引っかかっていることがあった。ふと思い出し、ため息をつく。
あの時、あいつは、どうして…
.
「失礼致します」
涼介「はい」
障子の外で声がした。
涼介「菊乃、」
そこにいたのは彼女の家で女中として働く幼馴染みだった。かつては妹のように可愛がっていたものだ。
菊乃は表情を固くしたまま、こちらに目を合わせないようにして言った。
「…お食事を下げるお時間になりましたので」
涼介「あぁ…もうそんな時間か」
ほとんど手付かずの膳に目をやる。
菊乃はこちらに小さく頭を下げて膳を持ち上げ、出て行った。
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ばぶてり - とりあえず今出ている分まで全て読みました。すごく物語を作るのが上手く違うのも読みたい!と思って他の作品も見に行ったらまさかの前に読んでいた作品のほとんどが作者様でした。今まで色んな人の作品を読んできましたが、この作品が1番好きです。応援してます!!! (2020年8月23日 9時) (レス) id: 9d1b03072c (このIDを非表示/違反報告)
° * 。いのくま。* ° - 待ってました!現実世界、お疲れ様です!慧くん、どうなっちゃうの…?!というハラハラが止みません!最終話を読んでも感動で胸一杯になると思います。ちゃみ様の小説の世界観が大好きです!そして小説も!はな壱もんめ!ラストスパート、頑張ってください! (2020年6月29日 1時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
この(プロフ) - 待ってました!!読んでるだけ自分が主人公になったような感覚になり、ハラハラドキドキしてます!!この時期いろいろと忙しいかと思いますが無理をなさらずちゃみさんのペースでゆっくり書いてください!上から目線な感じになってすみません、楽しみに待ってますね! (2020年6月29日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - 伊野尾様はこれからどうなるのか…涼介様はどうするのか…夢主cはどの道を進むのだろうか…。伊野尾様はそのまま素敵で涼介様は夢主cを想っているのが凄く伝わるし…。結末、楽しみにしておりますっ! (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - お久しぶりです!この自粛中お引っ越しをしまして、ネット工事ができず…むずむずしておりましたw久しぶりにみたちゃみ様のはな壱もんめ!感動して涙が溢れましたw (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2020年5月1日 0時