#52 ページ5
ピンポーン
光が手を伸ばしたインターホンの向こう側で、微かに返事がした。
少しして鍵穴の回る音。
.
慧「わ、めっちゃ買ってんじゃん」
光「ムリムリ、冷蔵庫開けて早く！」
慧「ハイハイ」
A「おじゃまします…！」
慧「どぞ〜」
両手いっぱいに大きなスーパーの袋を手にしていた私たちを、慧は苦笑いしながら招き入れた。
.
彼から教えられた住所にあったそのマンションは、『一人暮らしの学生アパート』のイメージとはかけ離れた重厚な造りをしていて。
光「つーかここ家賃いくら？立派すぎて住所間違ったかと思ったわ」
慧「やー防音設備がある部屋ってなかなかないのよ」
光「ピアノ科も大変なんだなぁ」
慧「マジ生活厳しいっす」
中はこじんまりとした1LDK。少しだけ開いたドアの向こうの部屋には、小さめのグランドピアノ。あっちはピアノ専用の部屋なのかな。
ベッドも机もテーブルも、生活に必要そうなものは全部リビングの方に置いてあった。
光「家にグランドピアノってすげーな。いのちゃんてボンボン？」
慧「ちげーわ、親戚の家にあった古いやつもらったのー」
彼らの会話を横目に、買ってきたものを冷蔵庫にしまっていく。
俯いた拍子に、今朝柄にもなく巻いてきた自分の毛先がたらりと自然に入ってきて、ちょっと恥ずかしくなる。
いつもは絵を描くのに邪魔だからって束ねてしまうことが多いけど、なんとなく今日くらいは…と思って、
慧は、気付いてくれるかな？
.
慧「全部入りそ？」
突然背後から声をかけられて、思わずドキリ。
A「っ、うーんギリギリかなぁ」
慧「ごめんねー冷蔵庫ちっちゃくて。俺全然料理しないからさぁ」
A「大丈夫だよ、私の部屋のやつより大きいよ」
慧「マジ？」
全くセットしていないのか、いつものふわふわきのこじゃなくてすとんと落ちた彼の髪が、目の前でさらさらと揺れている。
慧は毎日この部屋に帰ってきて、生活してるんだな…
いつもよりゆるい感じのオフモードの彼に、今日は心のどこかが緊張しっぱなし。
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです！、これからも応援してます、頑張ってください！！ (2019年12月31日 2時) (
レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます！最近更新の頻度が高くて嬉しいです！すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます！ (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました！すぐ駆けつけられなくてごめん（ ; ; ）ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー！楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2019年10月26日 23時
