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#79 ページ33

慧がその時弾いていた曲は、前に私が好きだと言ったショパンのバラード1番だった。

物静かに始まる冒頭とは対照的な、情熱的なクライマックス。



最後の一音が響き渡って、大きく肩で息をした慧が鍵盤から指を離した時、



思わずパチパチ、と控えめに拍手を送った。





慧「わ、Aいたの」


A「けっこう前からいた」


慧「言えよー!びっくりした!」


A「ふふ、ごめん」




笑うとくしゃっとなる目元。たまにちょっと裏返っちゃう声も。
あぁ懐かしいなぁ、慧だなぁ。





A「最近忙しそうだね」


慧「んーバイト増やしたからね…」


A「すごいね、音が前と全然違う…伝わってくるものが強くなった気がする」


慧「えぇ、ほんと?」


A「うん…ってごめんね、素人のくせに」


慧「ううん、嬉しい。Aの意見が一番参考になるよ」


A「えぇ、いちばんは言い過ぎ…」


慧「ふは、マジマジ。Aほどちゃんと聴いてくれてる人なんていないからね」






そう言って笑う彼を見たらやっぱり嬉しくて、頰がゆるんだ。こんなに会話するの、いつ振りかなぁ。






慧「あ、最近さぁ、けっこう同じ店で弾いてて」


言いながらゴソゴソと鞄に手を入れた慧は、お財布に入れてあった小さなカードを渡してきた。


慧「ここ。光とメシでも食いに来てよ」



カードに印字されていたアルファベット表記のそのお店は、パッと見なんて読むのかわからなかったけど。



A「へぇ…行ってみたい。今度行くね」


慧「お待ちしておりまーす」




ふにゃ、と笑った彼は、楽譜を丁寧にたたんで、荷物をまとめ始めた。





その手元を見つめながら、ふと思う。






パリだって。帰って来れるのは次の春くらいかな。ほんのちょっとだけどさ。




慧だったら、どうする?





.

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , 伊野尾慧 , 八乙女光   
作品ジャンル:恋愛
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです!、これからも応援してます、頑張ってください!! (2019年12月31日 2時) (レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます!最近更新の頻度が高くて嬉しいです!すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます! (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました!すぐ駆けつけられなくてごめん( ; ; )ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー!楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年10月26日 23時

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